君を思うと、胸がぎゅっと痛くて

「……聞いてなかったです」
「ホントはお前がもういいとか。病気から逃げることばかり言うから。ぶん殴りに来た」
「ハハ。痛いのは……もうイヤですね」

私は胸に手を当てた。
チクチクチクチクして。
もう疲れた。
もう充分だ。
そう思ってたのに。

「どうした? 本当にしんどいのか」
「ーー違います」

アキ先生は心配そうに、腕をとり脈をとっている。

「大丈夫。良くも悪くも、いつも通りのさゆだ」

そして笑う。
先生、やめてよ。
私のことそんな風に見ないでよ。

「……もう何にも要らないって本当に思ったのに。先生が居たら揺らいじゃうよ」
「いい。もっと揺らいで泣いて叫んで苦しめ。それが生きるっていうことだよ。さゆは、いま、生きてるんだよ」

先生はとても優しい瞳をして言うから。泣きそうになる。

「優しすぎて、怖いーー」
「どんな気持ちでも全部俺が受け止めてやる。だからもう一度言う。病気から逃げるな。自分の運命から逃げずに向き合え」
「アキ先生ーー」

また好きだと言いそうになるのをぐっと堪えた。
同じ答えしかないのに、何度も苦しみたくない。

「ハァ。病院から近いと思って歩いてきたのに、この辺りは入り組んでるから道に迷った」
「なにそれ、意外に方向音痴なんですね」
「誰にだって得意不得意はある」
「あ、そうだ。私、学校。学校行かなきゃ」

ふと立ち上がろうとした腕をアキ先生が掴んだ。