B4サイズに魔法をつめて

「もぅっ、千冬にもこの間話したじゃん!」
と、美菜が頬を膨らまして、小声でこう言った。



「大輝くんのことが好きだから、仲良くなる方法を一緒に考えてって話!」



「あ、あ〜……」



思い出した。

そういえばそんな話、聞いたっけ。



(すっかり忘れてたな)



美菜にも千穂にも、漫画を描いていることは言っていない。

漫画で忙しいから、その話を忘れていたとは、私も言うつもりもないけれど。



気のない返事がバレたらしく、千穂があからさまに眉間にシワを寄せる。

美菜も不機嫌な声になって、
「もういいよ、千冬はどうせ私の恋バナなんて興味ないもんね?」
と、席を立ち、その後に千穂も続いて、私はひとりになった。



「めんどくさ……」



小声で呟く。

その時教室の後ろのほうで、大きな笑い声が聞こえた。

振り向くと、クラスで浮いている大谷 真昼(おおたに まひる)が、クラスのリーダー的存在である、馬場(ばば)さんに足を引っ掛けられて転んでいた。