B4サイズに魔法をつめて

ムカムカし過ぎて、言い返せない。

だから、
「あんたに何がわかるのよ」
とだけ、言い返した。


「いつもそれ、言うよな」
と、明石 秀人は笑った。



「塚原さんってさ、誰に向かって漫画を描いているの? 読者じゃないの?」

「えっ……」

「読者の人ってみんながみんな、あんたみたいに漫画を描いている人間じゃないはずだろ? コマ割りをしたことがない、オレみたいな人間だって、読者のひとりだよ」

「……」

「それとも、何? 漫画を読む人はみんな、漫画を描けないといけないわけ?」

「そんなことない、そんなこと、言ってない」



明石 秀人は「そう言ってるんだよ。あんた、さっきから」と、低い声で呟いた。



何か言い返したくて。

何か言わないと、ダメな気がして。



「わ、私の漫画は、絵を大切にしてるから」
と、精一杯の反論をしてみる。



(どうだ、反論出来ないでしょう?)



そう思ったのも束の間。



「絵を大切にしてる? よく言えるね? そんなこと」
と、明石 秀人は笑った。