B4サイズに魔法をつめて

(諦めたくない)



時間なんて、ない。

描き直しをしていたら、間に合わないかもしれない。



(だけど、諦められない)



今。

動かなくちゃ。



『師匠の漫画、読みたいんです。早く、誌面で』



……真昼。

待っていなさいよ。



私は他の二枚の原稿用紙も確認する。

インクで汚れている箇所が、一番上に置いていたページよりも狭い。

二枚とも、階段の背景を描いたコマが無事で。

ひどく汚れているのは、主人公のアップと、彼の後ろ姿を全身で描いた、背景なしのコマだった。



(そうだ、このコマ……、背景には階段じゃなくて、シャボン玉みたいなトーンを貼って、雰囲気を出そうと思っていたんだ)



「……やる」



誰に言うでもなく、声に出していた。



「やってやる、絶対に間に合わせる!」



一番上に置いていたページは全部描き直すけれど、他の二枚は全部描き直さなくても良いかもしれない。