ソレが出て来る話を聞かないでください

まさか、自分がこんな悪い事をするなんて思っても居なくて、絵里の家から出てもしばらく心臓がドキドキしていました。

高価なものを盗んだわけじゃなくても、これは立派な窃盗です。
「私、とんでもないことしちゃったよね……」

バスに揺られながらようやく言葉を発した私に悟志が「俺も同罪だから」と手を握りしめてきました。

悟志が最初に調べてくれた住所はやはり別のものだったようで、絵里のアドレス帳がなければ自分たちの調べものはとんざしていたと、慰めてくれました。

そうしてやってきた隣街にある史也くんの家は立派な二階建ての一軒家でした。
庭も広くて子供用のブランコがあり、カーポートもとても広くて驚きました。

「史也くんのお父さんとお母さんから話を聞くんだよね?」
「あぁ。そのつもりだよ。あの昔話をどこで聞いたのか調べないと」

だけどなかなか足が玄関へ向かわないのは、やっぱり立派なたたずまいの家のせいでしょうか。
見ず知らずのお宅にお邪魔するという勇気がなかなか湧いてこないようでした。

私たちがモタモタしている間に、玄関が先に開きました。
出て来たのは小学校中学年くらいの女の子です。