ソレが出て来る話を聞かないでください

作者は声にならない声を上げてその場に尻もちをついてしまいました。
今のいままで、ホラーを好んできたくせに、実際にこの世のものではないものを目の当たりにして腰がぬけてしまったんです。

そのままの状態で数十秒、いいえ、実際はもっと短い時間だったかもしれません。
けれど作者には何十分、何時間と感じるほどの長い時間が経過しました。

ガチャッと玄関の鍵を開ける音がして我に返りました。
まばたきをすると、さっきまでそこにいた影は消えてなくなっています。

「ただいまぁ」

少し間の抜けた夫の声が聞こえてきて、ようやく自分が震えていることに気が付きました。