ソレが出て来る話を聞かないでください

「お願いがあります、史也くんの住所を――」
私がそこまで言ったときでした。

強烈な寒気が全身を包み込みました。
隣の悟志を見ると、悟志も青ざめて私を見ていました。

ソレがくる……!!
こんな大事なときに来るなんてという焦りはありましたけれど、ソレはもともと神出鬼没です。

絵里の家にいるときに現れるかもしれないと言う考えも持っていました。
「彩音、外に出よう」

悟志に言われて頷き、ソファから立ち上がったときでした。
ソレがリビングの出入り口の前に立っているのが見えたんです。

私たちの考えでは、もし話をきいている途中でソレが現れたら、とにかく外へ逃げ出す計画でした。

絵里の家の近所には公園やコンビニがあるので、そこに隠れることができればソレは消えるはずですから。

だけど、ソレは私たちの行く手を遮るように立ちはだかっています。
「あ……どうしよ」