ソレが出て来る話を聞かないでください

私の目にはすでに涙が浮かんで、痛くて仕方ありませんでした。
そのときまた、まばたきをしてしまいました。

ソレが両手を伸ばしていました。
ソレは私の首を閉めようとしているのです。

すぐ近くにあるソレの顔を見ると、長い髪の毛の隙間から私を見ていました。
ジットリと恨みを持つような目元は、今や楽し気に歪んでいたんです。

もう少しで私を殺すことができる。
それを楽しんでいる様子でした。

もう一度瞬きをすればきっと首を絞めて殺される。
心臓が爆発してしまいそうな速度で打っています。

全身を包み込む冷気によって吐く息が白く染まりました。
それなのに汗が流れてとまりません。

額から流れて来た汗が私の右目に入って――。
「●●さん、やめて！！！」

ギュッと目を閉じると同時叫んでいました。