ソレが出て来る話を聞かないでください

私も慌ててそれについて行きます。
建物は平屋の木造住宅で、お世辞にも大きいとは言えないサイズ感でした。
窓が割られ、玄関ドアには×印に板が打ちつけられていました。

勝手に侵入されないようにしていたみたいですが、その板も腐食が進んでいて、少し触れると落ちてしまいそうな有様でした。

案の定、悟志が手を伸ばしてその板を引きはがしてしまいました。
釘も劣化して、ボロボロと地面に落下していきます。

「入るぞ」
さすがに少し怖いのか、悟志の声が上ずっていました。

私は頷いてゴクリと唾を飲み込みました。
こんな大冒険をした経験は今までに1度もありません。

玄関ドアは板を剥がしただけで私たちが入るだけの隙間が開いていました。
それくらい、建物は歪んでいたんです。

もしかしたら、私たちが建物内にいる間に倒壊してしまうかもしれない。
そんな不安もありましたけれど、ここまで来て引き返すわけにもいきません。