ソレが出て来る話を聞かないでください

小野彩音さんの話を聞き始めてからずっと耳鳴りがしていました。

話が進むにつれて全身が寒気に覆われ、更にあの腐ったような臭いが充満していたんです。

本当なら異変が起きた時点で話を切り上げて通話を切るべきでした。
でも、もうタイミングを逃してしまったんです。

きっと今ふりむけば部屋の中にあの黒い影が見えるはずです。
それを回避するためにはどうにか会話を長引かせて、ソレが消える方法を聞き出すしかありません。

「大丈夫だよ。だから、早く続きを聞かせて」

全身から冷や汗が吹き出してパソコンの前に座っていることもやっとでしたが、どうにか言葉を振り絞りました。

このままだと、どんどん体調が悪くなっていくのが目に見えています。

「そうですか？　じゃあ、話の続きをしますね」

小野彩音さんは心配そうな顔つきをしながらも、続きを語ってくれました。