ソレが出て来る話を聞かないでください

「行ってみるか」
細い山道を見つめて悟志がつぶやきました。

山道は誰も使っていないようで腐葉土が降り積もり、アスファルト部分がほとんど隠れてしまっています。

一歩足を踏み間違えればすべってこけてしまうでしょう。
更に山道には街灯がひとつもありません。

中へ入って行って日が暮れれば、辺りは真っ暗になるはずです。
そんなことで躊躇していると、悟志が私の右手を掴みました。

その手の力強さに一瞬びっくりしたけれど、悟志は行く気なんだとわかりました。
「うん、行こう」

私は悟志の手をギュッと握り返して、そう答えました。