本当にあった怖い話

これは私の夫が若い頃に経験した話です。

夫は元々車好きで、それも峠を走る、昔で言う「走り屋」というタイプの車好きです。

「走り屋」というのは何人かのチームになっていたり、チームには入らずに個人で走りに行ったりするわけですが、夫はとちからといえば後者の方でした。

とはいえ、峠に走りに行くとなれば何人かの友人で集まっていたそうです。

その日も地元では有名な一本道の峠に友人たちと共に走りに行ったそうです。

峠の決められた場所から決められた場所まで猛スピードで車を走らせ、度々現れるカーブを楽しむ。

私には何が楽しいのかわかりませんが、問題なのはその峠でした。

先程地元では有名だと書きましたが、走り屋にとって面白いと峠だという意味だけではありません。

そこは有名な心霊スポットなんです。

そんな場所に、他の車が通らないような真夜中に行くわけです。

だけど彼らの目的は幽霊を見ることではなく車を走らせることなので、特に気にはしていなかったんでしょう。


そしていざ車を走らせはじめたときのことです。


夜中の真っ暗な峠を三角の傘を頭にかぶり、お遍路さんのような姿をした3人組が歩いていたそうです。

あれ、こんな時間におかしいな__?


しかし運転に集中しないといけません。
人がいたとはいえ、すれ違えないほどの狭い道でもありません。

夫はそのまま3人の横を走り抜け、目的場所に到着しました。


少し開けたスペースには仲間がすでに到着しています。
これからまた来た道を猛スピードで戻り、自分たちが満足するまで遊ぶのです。

「よっし、じゃあ行こうか」

夫がまた車に乗って運転し始めた時でした。

行けども行けどもあの3人組が当たりません。
先に述べた通りこの峠は一本道で、脇道はどこにもありません。

まして人が通れるような道など存在しないのです。

その瞬間背筋がゾゾゾゾゾーーー!!と泡立ちました。

最初の地点まで戻って友人らが来るのを待つと夫はすぐに車を降りて「行きにお遍路姿の3人組を見たか?」と聞きました。

友人らはみな首を縦に振り「見た」と答えます。

そして「帰りにも見たか?」と聞くと友人らは顔を見合わせて真っ青になりました。

誰一人として帰りにあの3人組を見ていなかったのです。

普段は何度も車を走らせて遊ぶ夫らも、その日は一度峠を往復しただけで帰ってきたそうです。

峠で見たあの3人組が誰だったのか、今でもわからないままです……。

これで、私の夫が経験した1つ目の怖い話を終わります。