はるけき きみに  ー 彼方より -

「帰るって? いや、それはちょっと待ってくれ。マシューに頼みたいことがあるのだ」
「たのみたいこと?」

「ああ、新しいバイヤーが来てね。商談しようとしたが言葉がわからない。君は通訳も出来るが銃の機能や扱いにも通じている。あらためて貴重な人材だと痛感しているんだ」
「すると、銃の売買か」

「その通り」
「断るよ、これ以上この船に関わるのはごめんだからね」
「そう言わないでくれ。謝礼はたんまり弾むよ。なにせ客の主筋は尾張から来た豪傑だ。銃の価値をわかって高値で買おうとしている侍だからな」

 なんのつもりか手の内を見せた。
 腹を割ってみせて片棒を担がせるつもりなのか。

「そうか。だったら見返りは期待していいんだな」

 断る手もあった。
 引き受ければ紫音の元に帰るのが遅くなる。
 だがあの地区に戦いが起ころうとしている。

 さらなる武器を入手する、今少し時間を割けばそれが可能だった。

 本能が、それを手繰り寄せろと言っていた。


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