はるけき きみに  ー 彼方より -

 傭兵団が屋敷の前を通る。

「とうとう動き出したわね」
 窓から見る紫音に、
「お、お嬢さま、いったいどうなるのでしょう」

「大事なのは情勢を見ることよ。私たちは・・」
 と言いかけたときだった。

 一人の百姓が傭兵の前に出た。
「もし、お侍様、後生だから田に入らないでくださいませ。稲が倒れたら米が出来ない、飢えて死んでしまいます」

 すがるような彼に、
「うるさいっ! だまれ」
 いうなり刀を抜いた。
 容赦なく切りつける。

「おとなしくすれば切られまいものを」
 痛みでのけぞる姿を嘲笑する。

 傭兵が遠ざかるのをじっと待った。
 身を伏せて駆け寄ると、
「しっかりするのよ、傭兵はもういないわ」

 百姓はぐったりして意識がない。
「ひどいことを・・」

 必死の思いで手当てをする。
 そんな耳に雄たけびが届いた。

 はるか向こうを行く傭兵の声だった。

 粉塵をまき散らし、気勢を上げて闊歩していた。


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