はるけき きみに  ー 彼方より -

「あの鹿島が戦さ支度をしているのです。屋敷の内外に大勢の傭兵を集めて、武器も次々運び込んでいます。だから不測の事態が起きるだろうと」

「前にもここで聞いたわね、鹿島の動きがおかしいって」

 石川は、大和川に流れた血染めの小袖の話をした。
 上流の疑わしい家は鹿島屋敷だとも。その屋敷に斉極屋の姉妹が捕らわれていることも。

「だとしたら、その鹿島に敵対しているのは・・」
「やはり斉極屋です。二度目に密偵が行ったとき、捕らわれている姉妹を助けようとしたそうですが」
 かけられた南京錠が頑丈で破ることが出来ない。

 断念しようとすると、
「あの子だけでも助けてやって。幸江はずいぶん衰弱しているわ」
 加奈がうずくまっている妹を指差した。
「助ける策を練ってきます、待っていてください」

 密偵は帰還して次第を告げた。
「なんということだっ!」
 斉極屋が怒りで震えた。

 それから怒涛の勢いで軍備をすすめた。
 持てる財力のすべてで兵を、武器をかき集めていく。

 たちまち屋敷は要塞のようになった。

 そんな様子を民が見ていた。
 大きな戦さがやって来る、それも近いうちに。
 否が応でもそれを感じた。