はるけき きみに  ー 彼方より -

「まあ、どうしたのでございますか」
 八重が驚いた。

 石川と田中が駆け込むように来たからだ。
「紫音さまはいないか。この地区が危ないのだ」
「あぶない、と申しますと?」
「・・それは」
 言いかけたときだった。

「八重、座敷に入ってもらって。表でする話じゃなさそうだわ」
 紫音が玄関から出て来た。


「大きな戦さが起きそうなのです、しかもこの辺りが主戦場になるかと。だからすぐにも避難していただきたいのです」
 と石川が言いかけて、
「あいつら、あの異人の男はいないのですか。そこらに気配がないようですが」

 いつもは目につく所にいた。
 まるでここを守っているようで、なぜか面白くない感情が湧いてくる。

「ああマシューとサジットね、二人は出かけているわ。もう十日になるかしら」
「十日も前に?」

「なんでも、じゅう? 銃に使う弾が違っていたとかで。それで外国船に交渉するために出かけたのよ」
「だとしたらあのオランダ船に行ったのですか」
「そうだと思うわ。間もなく帰って来ると思うのだけど。でも、さっき戦さって言ったわね、どういうことなの? しかもここが主戦場になりそうだって」