はるけき きみに  ー 彼方より -

「戦さは避けられないのでございますか」
 地区会長が震えながら言った。

「もしこの地が戦場になれば稲がなぎ倒されます。私ら百姓が一生懸命育てた田んぼです。大事な食糧です、その日暮らしの収入源でもあるのです」

 石川と田中が無言で対していた。
 彼らにとってもかける言葉がないのだ。


 この街の情勢が一気に変わろうとしていた。

 きっかけは自分らの上司、鹿島の不可思議な動きだった。
 屋敷の内外に不穏な輩を集めて常駐させているという。いわゆる傭兵という集団だ。

 役所の長である鹿島。
 絶対的な力を持っているはずの彼がなぜそんなことをするのか。
 つまりは敵対する人物がいるということだ。

『誰なんだ、それは?』

 街はそんな噂でもちきりになっていた。