はるけき きみに  ー 彼方より -

 そして鹿島屋敷を辞した。

 振り返っても地下室らしきものは見えない。

 だが、そばを大和川が流れていた。
 石川から報告されたそれだ。
 川の元をたどった。
 その一部が鹿島屋敷の石垣から流れ出ていた。

 それをじっと見る。
 滔々と流れる水の向こうに、娘らの存在を感じた。

 鹿島の顔を思い出した。
 渡した珍品に目を丸めていた。

 今ごろあの名器にうつつを抜かしていることだろう。

 憎悪の念が、徳兵衛の五臓六腑で、渦を巻いていた。