はるけき きみに  ー 彼方より -

 地道な捜査が一年続いた。
 もうこれ以上は、と断念する気持ちにもなってくる。
 そんな矢先だった。
 今この時になって急転直下で事態が動き始めたのだ。

 石川は田中と相談した。
 あれこれ思案した結果、まずは斉極屋を訪ねることにした。

 主人である徳兵衛に血文字の小袖を見せる。
 彼は驚愕して、

「娘です、娘の加奈と幸江でございます。加奈の字に間違いありません」
 うめく声を上げた。


 斉極屋はすぐさま手をうった。
 密偵を雇って鹿島屋敷を捜索させたのだ。

 裏家業の彼らは金を見せるとすさまじい働きをした。

 たちまち敷地内に斉極屋の娘がいることを探り出し、場所も屋敷の地下だと突き止めた。

 報告を受けて徳兵衛が激怒する。
 だが相手はこともあろうに役所の長だ。正面から談判はできない。

 そこで豪商の立場で鹿島屋敷を訪れた。

「大陸渡来の珍しい茶器を手にしましたので、進呈いたしたく参上しました」
 慇懃に頭を下げる。

 鹿島は喜色満面で受け取った。
 彼は地下に監禁している娘が、徳兵衛の愛娘であることを知らなかったのだ。