はるけき きみに  ー 彼方より -

 石川はぐっと唇を噛んでいたが、
「実は、この話には続きがあるのだ。その後でこんなものが発見されたのだ」
 と傍らの包みを出した。

 中に入っていたのは、襦袢の小袖だった。
 切り裂くように破られたそれがまず目を引いた。
 畳んだそれを広げると文字らしいものが出てくる。

『助けてください、誘拐されて監禁されています。斉極屋加奈・幸江』
赤黒い文字でそう書かれていた。

「これは血文字です。見張りの隙を見て自分の血で書いたものでしょう」
「・・っ、まあ!」

「どこに監禁されているのか、場所は書かれていません。おそらく本人も誘拐された先がわからないのだろうと思います」

 稽古ごとの友達は、籠に乗せられて連れて行かれたと言っていた。
 すると籠のままどこかの建物に入り、密室の入口で降ろされたのではないか。

「しかし、これは大和川の上流からながれてきたものです」
「大和川の?」

「はい。魚を捕っていた少年が見つけたのです。だが彼は文字が読めない。だから知り合いの舟頭に渡したのです。こんなものが岩に引っかかっていたのだと」

 受け取った舟頭はあの白髪の男、瀬田だった。
 見るなり瀬田はことの真相を察する。