はるけき きみに  ー 彼方より -

 それを稽古仲間の娘が見ていた。

 男らは二人に話しかけ、そのまま連れて行こうとする。嫌がっている様子に、
「もし、加奈ちゃん、幸江ちゃん、いったいどこへ行くの?」

「助けて!」

 二人が叫ぶと男があわてて指笛を鳴らした。
 陰から仲間が現れる。
 彼らは人を乗せる籠まで用意していた。
 それに押し込むとすぐさま走り出した。

 友達は血相を変えた、あたふたと斉極屋に報告する。
 驚いた斉極屋は手分けして探しにでる、だが見つからない。

 時間が経つごとに苦悩がつのった。
 一昼夜が過ぎて、父である斉極屋徳兵衛は番頭を呼んだ。

「加奈と幸江は、田舎の乳母を訪ねて行ったのだ」
「・・え?」

「店の者にはそう伝えろ。二人は、ついうっかりして言伝もせず出発したのだと。だからもう探す必要はないのだと」
「な、なぜでございますか」