「ですが、斉極屋は誘拐された二人の事件を役所に申し出てはいませんでした」
「え、どうして? 娘が誘拐されたら捜索の願いを出すはずでしょう? 一刻も早く探し出すために」
「そうではあるのですが、彼には事情がありました。上の娘は加奈というのですが、近々祝言を控えているのです。誘拐されて、その、もしあらぬ噂を立てられたらと」
「それは、いったいどういう?」
「つまり嫁入り前の娘がどんな目にあわされているか、世間はそんなことを憶測するものです。一部の者にとっては好餌で、その口から娘の不名誉な噂が立ってしまうのです」
「・・そんな! ひどいわ」
「そういう事情があって、父親である斉極屋はみずからあの倉庫にやって来たのです。信用できる番頭だけを伴って」
だが、解放された中に二人の娘はいなかった。
落胆して膝をついた。
そこに石川が歩み寄った。
「なにか事情があるのか」
斉極屋が顔を上げた。
役人でありながら石川の目は実直そうだった。
そんな彼に事情を打ち明けたのだ。
「娘たちはあの日、お茶の稽古に出ていました。その帰りに見知らぬ男に声をかけられたそうなのです」
「え、どうして? 娘が誘拐されたら捜索の願いを出すはずでしょう? 一刻も早く探し出すために」
「そうではあるのですが、彼には事情がありました。上の娘は加奈というのですが、近々祝言を控えているのです。誘拐されて、その、もしあらぬ噂を立てられたらと」
「それは、いったいどういう?」
「つまり嫁入り前の娘がどんな目にあわされているか、世間はそんなことを憶測するものです。一部の者にとっては好餌で、その口から娘の不名誉な噂が立ってしまうのです」
「・・そんな! ひどいわ」
「そういう事情があって、父親である斉極屋はみずからあの倉庫にやって来たのです。信用できる番頭だけを伴って」
だが、解放された中に二人の娘はいなかった。
落胆して膝をついた。
そこに石川が歩み寄った。
「なにか事情があるのか」
斉極屋が顔を上げた。
役人でありながら石川の目は実直そうだった。
そんな彼に事情を打ち明けたのだ。
「娘たちはあの日、お茶の稽古に出ていました。その帰りに見知らぬ男に声をかけられたそうなのです」

