はるけき きみに  ー 彼方より -

 あたりは夕闇が迫っていた。
 その上空はまだ昼間のようだった。まだらな雲が太陽を受けて輝いていた。そして洋々と流れていた。

 上と下でちぐはぐな光景にも思えた。

 ふと、地区会長の言葉がよみがえった。

「戦さなどごめんです。我々は米を作って平和に暮らしたい、それだけなのです。それ以上何を望むものがあるでしょうか」

 陽気に騒ぐ農民たちも目に浮かぶ。
 つかの間の祭りを楽しんで、また明日から土まみれになって生活の糧を作っていくのだろう。

 その手前で微笑んでいる人がいる。
 慈しんでくれた父丹波だった。
 そして幼いころに別れた母の姿だった。

 この空の下で、いったい何が起こっていくのだろう。
 そしてどうなっていくのだろう。

 胸を押さえて、じっと目を閉じた。