はるけき きみに  ー 彼方より -

 石川と田中が丹波の位牌に手を合わせて数日が経った。
 彼らは「間もなく」と言った。

 だが世間には役所の動きが伝わってこない。
 近江屋に聞いても、さあと首をかしげるばかりだ。

 確かに何かが動いているように見える。だが目隠しをされたように知るすべがなかった。

 そんなとき、意外な訪問者があった。
 京都から宋念がやって来たのだ。
 あの修永寺の若い僧だった。

 よほど急いできたらしく八重の屋敷に入るなり、
「見つけたのです、信安様の日誌を」
 挨拶もそこそこに言った。

「香苗様のお話を聞いて書きつけたものです」

「え、それはもしかしてあの親睦会の男の名前もあるのですか」
「そうです、その名が書かれていたのです。日誌は毎日その日に書かれます。だから信安様がまだお若い頃の矍鑠としていたときのつづりです」

 紫音が息をのむ。
 正面から宋念を見て、
「もしかして、その名前は」
「え?」
「あの、鹿島というのではありませんか」