はるけき きみに  ー 彼方より -

「なぜ置いて行ってしまうんだ」
 追いかけて来たマシューだ。

「あら、楽しそうだったからお邪魔だろうと思ったのよ」
「なにが楽しいものか。最後は子供まで寄ってきてもみくちゃだ」

「それはどうも。みんなはしゃいでしまってすみませんね」
 会長が頭を下げる。

「彼らは憂さ晴らしのように楽しんでいるんですよ。最近ちょっと気になる知らせがあったものでね」
「気になる知らせ?」

「なんだか近いうちにここらで戦さが始まるらしいと、そんな物騒な知らせです。もしここの田畑が戦場になったら大変だ、せっかく育っている苗がめちゃくちゃになるんですからね」
「・・それは」

「彼らは稲を育てて暮らしを立てている。米の収穫は一年に一度だけ。あとは日雇いの仕事を探したりするしかない。いわばそんなカツカツの生活なのですから」