はるけき きみに  ー 彼方より -

「ところで、今年の優秀賞は誰になりそうなの? どれもすごくいい作品に見えるけど」
 マシューを置き去りにして歩き始める。

「私が審査の長を任されているんですが、選ぶのはなかなか難しゅうございます」
 思案顔で頭をかいた。

 その目が近くの農夫と合った。
 彼らは寄ってきて、
「会長、私の案山子を見てください。まるで生きているようでしょう。なにしろ三日もかけて作ったんですからね」
「いや、俺の案山子に及ぶものか。この顔に工夫がありましてね。これで睨まれたら雀も飛んで逃げるって寸法で」
「それなら俺の方が上だ。これほど人間に似ているのは他にないぞ。ここらの体格など・・」

「ああ、どれも良くできているね。甲乙つけがたい出来だと思うよ」
 微笑んだ会長は逃げ腰だ。

「そんなぁ、どれがいいのかおっしゃってくださいよ。審査の結果によっちゃあ、うちの嫁の機嫌が悪くなるんだから」
「そうだな、尻に敷かれているお前には死活問題だよな」
「追い出されかねないんじゃないか、着の身着のままでよ」

 ドッと笑いが起こる。
 そんな言い合いが辺りに響いていた。