はるけき きみに  ー 彼方より -

 香苗の急逝に、丹波が紫音の世話をしてくれる者を探していた。
 地区の高名な篠沢家は八重のあこがれでもあった。応募するとすんなり侍女として雇ってくれた。

 亡き香苗との接触はない。だが家に入って感じたものがあった。
 主人である丹波の衣類は言うまでもなく、篠沢家に伝わる食器や道具類までが見事に手入れされていた。

 生活で、つい妻を呼びそうになる丹波にもこの家での香苗の来し方が偲ばれた。

 その香苗が抱えていた苦悩を京都で初めて知った。
 あれほどの苦しみを抱えて、覚悟の自害だったとは。

 自分でさえこれほど驚いたのだ。
 紫音の気持ちはどれほどかと思う。