八重が廊下を行きつ戻りつしていた。
紫音の部屋が気になってしようがない、だが声をかける勇気もない体だ。
と、急に部屋の戸が開いた。
「うわっ!」
「うわって八重、それはこっちの台詞だわ。いったいどうしたって言うの?」
「あ、その、なんでも、ございませんのですが。いえ、あの、今日はいいお天気で、ございますね」
「あらそうかしら。雨が降り始めたわよ、さっきから」
指差した軒から雫が落ちている。
「あ、そうですね。いえその、もしかしてお呼びになったのかと思って。私も年を取って少々耳が、とは思うのですが」
「八重ったら。さしずめマシューに頼まれたのでしょう、部屋のなかで私がなにをしているのか心配だから見て来てほしいって」
「あ、いや、そんな」
「だいじょうぶよ。いえ、まったく大丈夫でもないんだけどね」
わらって息をつく、そして部屋に招き入れた。
「八重は知っていたの、宋念さんのあの話、お母さまのことよ」
「いえ、存じませんでした。私は香苗さまが亡くなってからお屋敷に奉公にあがったので」
紫音の部屋が気になってしようがない、だが声をかける勇気もない体だ。
と、急に部屋の戸が開いた。
「うわっ!」
「うわって八重、それはこっちの台詞だわ。いったいどうしたって言うの?」
「あ、その、なんでも、ございませんのですが。いえ、あの、今日はいいお天気で、ございますね」
「あらそうかしら。雨が降り始めたわよ、さっきから」
指差した軒から雫が落ちている。
「あ、そうですね。いえその、もしかしてお呼びになったのかと思って。私も年を取って少々耳が、とは思うのですが」
「八重ったら。さしずめマシューに頼まれたのでしょう、部屋のなかで私がなにをしているのか心配だから見て来てほしいって」
「あ、いや、そんな」
「だいじょうぶよ。いえ、まったく大丈夫でもないんだけどね」
わらって息をつく、そして部屋に招き入れた。
「八重は知っていたの、宋念さんのあの話、お母さまのことよ」
「いえ、存じませんでした。私は香苗さまが亡くなってからお屋敷に奉公にあがったので」

