はるけき きみに  ー 彼方より -

 空に向かって顔を上げた。

 風が吹き渡っていた。
 ヒューと鳴るそれに、老牧師の声が重なったように思えた。

 熱くなるものがある。それは自分の胸の奥だったり、瞼だったりする。
 目を閉じて彼の姿を追ってみる。

 そして、再び見開いた瞳に映るものがあった。
 紫音だった。

 哀しみをたたえて憔悴しきって、それでもわずかに微笑んでいる。

 そんな姿で枝垂桜の元に立っていた。

 そしてマシューを見つめていた。

 ・・つかの間、ふっと息が止まった。