はるけき きみに  ー 彼方より -

 その懇親の会で起こったことは、次の通りだった。

 役所でおもだった二十名が妻を連れて出席した。
 会場は堺の老舗の料亭だった。

 宴が始まって間もなく、丹波が呼び出された。
 役所で問題が起きている。些細なことだが座を外して来てくれないか、というものだった。
 香苗に声をかけて役所に向かう。
 香苗は一人で夫の同僚やその妻と向き合った。礼を尽くそうと懸命に接する。

 そんな中、一人の男が徳利を持ってきた。
 彼は、
「日ごろ丹波様にはお世話になっていて」
 と香苗に酒を勧めた。

 出されたそれを断る理由はない。
 不調法ですが、と飲み干した。

 それから間もなく体に異変が起こった。
 目がグルグル回って意識を失いそうになる。
 こんな大事な席で、と持ちこたえようとした。だが眩暈はひどくなり、その場に倒れそうになった。