ーーどうしてこんなこともできないんだ!
ーーこの役立たず!
ーーこれだから側妃の娘は、本当に汚らわしい!
「……っ!」
ライラの両目が開かれる。目の前には、天井が見えた。
(夢……そっか、私、狼人族に生贄として来たんだっけ)
ぼんやりと天井を見つめていると、目じりに何かが流れ落ちる。涙だ。ライラはいつの間にか泣いていた。
ゆっくり体を起こして目をこする。ここに来る前、侍女のように扱われこき使われていた頃の夢を見たのだと自覚する。どんなにちゃんと仕事をしても、暴言を吐かれ、頬をぶたれ、背中を鞭で打たれ、酷い時は蹴り飛ばされたりもした。
それでも、痛々しい顔をしていれば被害者ぶるなと文句を言われ、逆に笑顔を作ればへらへらと笑うなと文句を言われる。何をしてもライラは文句を言われ怒られるのだった。
だが、ここではもうそんな思いはしなくてもいい。誰もライラを殴ったり叩いたり責めたりしない。ほうっと静かにため息をつくと、横でもぞもぞと動く気配がした。
「どうした?眠れないのか?」
横から声がして振り返ると、レリウスが体を起こして心配そうな目でライラを見ている。
「何でもありません。ちょっと目が覚めただけで、大丈夫です」
レリウスに心配をかけないようにと無理矢理笑顔を作ってそう答えるライラを見て、レリウスは眉間に皺をよせた。
「大丈夫な顔じゃないだろ」
そう言って、ライラの体を引き寄せてレリウスは自分の腕の中に閉じ込めた。
「レリウス様!?」
「いいから。こうして誰かに抱きしめられたほうが落ち着くだろ」
よしよし、とレリウスがライラの背中を優しくさする。それはまるで小さな子供に対して行うようなそぶりだが、それでもライラはなんだか嬉しかった。
(あったかい、誰かに抱きしめられたのっていつぶりだろう?)
ずっと感じることのなかった人の温もりを感じて、ライラの心はポカポカとあたたかくなっていく。さっきまで不安で苦しかった心が、ふんわりと溶かされていくようだ。
「レリウス様、あったかい……なんだか安心する……」
「そうか、それはよかった。このまま寝るぞ」
そう言って、レリウスはライラを抱きしめたままベッドの中へ潜り込んだ。ふわふわのベッド、レリウスの暖かい温もり、ライラはほんわかとした心地よさを感じながら、そっとレリウスの服を掴む。それに気づいたレリウスは、優しく微笑んでライラの頭を静かに撫でた。
ーーこの役立たず!
ーーこれだから側妃の娘は、本当に汚らわしい!
「……っ!」
ライラの両目が開かれる。目の前には、天井が見えた。
(夢……そっか、私、狼人族に生贄として来たんだっけ)
ぼんやりと天井を見つめていると、目じりに何かが流れ落ちる。涙だ。ライラはいつの間にか泣いていた。
ゆっくり体を起こして目をこする。ここに来る前、侍女のように扱われこき使われていた頃の夢を見たのだと自覚する。どんなにちゃんと仕事をしても、暴言を吐かれ、頬をぶたれ、背中を鞭で打たれ、酷い時は蹴り飛ばされたりもした。
それでも、痛々しい顔をしていれば被害者ぶるなと文句を言われ、逆に笑顔を作ればへらへらと笑うなと文句を言われる。何をしてもライラは文句を言われ怒られるのだった。
だが、ここではもうそんな思いはしなくてもいい。誰もライラを殴ったり叩いたり責めたりしない。ほうっと静かにため息をつくと、横でもぞもぞと動く気配がした。
「どうした?眠れないのか?」
横から声がして振り返ると、レリウスが体を起こして心配そうな目でライラを見ている。
「何でもありません。ちょっと目が覚めただけで、大丈夫です」
レリウスに心配をかけないようにと無理矢理笑顔を作ってそう答えるライラを見て、レリウスは眉間に皺をよせた。
「大丈夫な顔じゃないだろ」
そう言って、ライラの体を引き寄せてレリウスは自分の腕の中に閉じ込めた。
「レリウス様!?」
「いいから。こうして誰かに抱きしめられたほうが落ち着くだろ」
よしよし、とレリウスがライラの背中を優しくさする。それはまるで小さな子供に対して行うようなそぶりだが、それでもライラはなんだか嬉しかった。
(あったかい、誰かに抱きしめられたのっていつぶりだろう?)
ずっと感じることのなかった人の温もりを感じて、ライラの心はポカポカとあたたかくなっていく。さっきまで不安で苦しかった心が、ふんわりと溶かされていくようだ。
「レリウス様、あったかい……なんだか安心する……」
「そうか、それはよかった。このまま寝るぞ」
そう言って、レリウスはライラを抱きしめたままベッドの中へ潜り込んだ。ふわふわのベッド、レリウスの暖かい温もり、ライラはほんわかとした心地よさを感じながら、そっとレリウスの服を掴む。それに気づいたレリウスは、優しく微笑んでライラの頭を静かに撫でた。



