「う、うわあああ!」

 ライラがレリウスの元へ来た翌々日。ライラは真っ黒で大きな狼の背中に乗っていた。

ーー落ちるなよ、毛を引っ掴んどけ

 真っ黒い大きな狼からレリウスの声が聞こえる。

「う、え、お、ああああ!」

 黒い狼の物凄いスピードにライラは背中から吹き飛ばされてしまいそうだ。だが、不思議なことに吹き飛ばされることはなかった。なぜなら、レリウスがこっそりライラに魔法をかけているからだ。レリウスは背中にライラを乗せて、狼の姿で自分の屋敷に向かっていた。レリウスの後ろには狼姿のベリックが走ってきている。

 どのくらい走っただろうか。いつの間にか大きな屋敷の前に到着していた。ポンッと黒狼姿のレリウスから煙が出てレリウスが人の姿になる。その拍子に、アリアはレリウスにお姫様抱っこされた状態になっていた。

(う、どうしよう、すごく近い!こんな、抱き抱えられているなんて!)

 恥ずかしさのあまりライラは顔を真っ赤にして俯く。だが、レリウスはライラを抱き抱えたまま渋い顔をした。

「軽すぎるな……」
「え?」
「いや、なんでもない。ここが俺の屋敷だ。行くぞ」
「え、ええっ!?あの、おろしてください!自分で歩けます!」
「だめだ。いいから俺にこうやって運ばれてろ」
「ええ…… !?」

 顔を真っ赤にしながらアワアワとしているライラを見て、レリウスは楽しそうだ。

「そんなにバタバタすると落ちてしまうぞ。ほら、俺の首にちゃんと掴まれ」
「う、はい……」

 ライラはレリウスの首に腕を回すと、恥ずかしさからレリウスの肩に顔を埋める。

「意外に積極的なんだな。そういうの嫌いじゃないぞ」
「?」