(レリウス様は、私が番なのが嫌なわけではなかったのね……)
本当は、ライラも体が引き裂かれそうなほどに辛かった。屋敷から離れれば離れるほど、レリウスと遠ざかるほど、身も心もズタズタになるようで苦しかったのだ。それでも、自分はレリウスの元からいなくなるべきだと本気で思っていた。それほどまでに、レリウスが大切で愛おしい存在。ライラにとっても、レリウスは紛れもなく番だという証拠だった。
レリウスがそっと体を離してライラの顔を覗き込むと、ライラは美しいトルマリン色の瞳から涙をポロポロと零していた。
「ライラ、ごめんライラ。ライラを泣かせたかったわけじゃない。辛い思いをさせたいわけじゃないんだ」
ライラの額に自分の額をくっつけて、ライラの目尻から指で涙を拭いながらレリウスはそっと囁く。
「私が、人間族だから、レリウス様は私が番なのが嫌なのだと思って……だったら、私がレリウス様と番でなくなれば、レリウス様は狼人族の方と番になれると思って……だから私……」
「ごめん、ライラ。違うんだ、俺はライラじゃなきゃだめだ。俺たちは番だ、絶対に何があろうと、この絆は繋がったままだ。俺の番は……愛しているのはライラ、君だけだから」
そう言って、レリウスはライラの唇にそっと口付けた。突然のことにライラは驚いて目を見開く。すぐに唇は離れ、またレリウスはぎゅっとライラを抱きしめる。ライラはレリウスの背中に手を回して、レリウスの服を握りしめた。
(暖かい……)
レリウスの体温が、自分へ移っていくような感覚だ。自分とレリウスは一つなのだと、まるでお互いの接する面が溶け合うかのように感じられ、ライラはそっと目を閉じる。
「私は、レリウス様がいてくだされば、誰かに何を言われても平気です。でも、私のせいでレリウス様が何かを言われたりするのは嫌なんです、だったら私はいない方が……」
「それでも、俺はライラがいてくれないと困る。ライラがいないことの方が何十倍も、何千倍も、苦しくて辛い。別に俺については誰が何を言おうとどうでもいい。今更始まったことじゃない。だからライラは気にしないでいいんだ」
「レリウス様……」
「一緒に帰ろう、ライラ。どんなことがあっても、ライラは俺が守る。絶対に幸せにする。だから、一緒に屋敷へ帰ろう」
レリウスがそっとライラの顔を覗き込むと、ライラはレリウスの月のような金色の瞳をじっと見つめた。風が吹き、ふわりとレリウスの艶やかな黒髪と銀細工のピアスが靡く。
「ひとつだけ、わがままを言ってもいいですか?」
「なんだ?」
レリウスが尋ねると、ライラはすこし頬を赤らめて口を開いた。
「……狼姿の、レリウス様の背中に、乗って帰りたいです」
ぼそっとライラがつぶやく。その言葉を聞いて、レリウスは嬉しそうに笑った。
「ああ、もちろんだ」
白狼王の生贄としてやってきた不遇な贄姫は、生贄になることなく黒狼の第三王子の番となり、黒狼の王子に溺愛され生涯幸せに暮らしたのだった。黒狼王子の屋敷からは、いつも楽しそうな笑い声が絶えなかったという。
本当は、ライラも体が引き裂かれそうなほどに辛かった。屋敷から離れれば離れるほど、レリウスと遠ざかるほど、身も心もズタズタになるようで苦しかったのだ。それでも、自分はレリウスの元からいなくなるべきだと本気で思っていた。それほどまでに、レリウスが大切で愛おしい存在。ライラにとっても、レリウスは紛れもなく番だという証拠だった。
レリウスがそっと体を離してライラの顔を覗き込むと、ライラは美しいトルマリン色の瞳から涙をポロポロと零していた。
「ライラ、ごめんライラ。ライラを泣かせたかったわけじゃない。辛い思いをさせたいわけじゃないんだ」
ライラの額に自分の額をくっつけて、ライラの目尻から指で涙を拭いながらレリウスはそっと囁く。
「私が、人間族だから、レリウス様は私が番なのが嫌なのだと思って……だったら、私がレリウス様と番でなくなれば、レリウス様は狼人族の方と番になれると思って……だから私……」
「ごめん、ライラ。違うんだ、俺はライラじゃなきゃだめだ。俺たちは番だ、絶対に何があろうと、この絆は繋がったままだ。俺の番は……愛しているのはライラ、君だけだから」
そう言って、レリウスはライラの唇にそっと口付けた。突然のことにライラは驚いて目を見開く。すぐに唇は離れ、またレリウスはぎゅっとライラを抱きしめる。ライラはレリウスの背中に手を回して、レリウスの服を握りしめた。
(暖かい……)
レリウスの体温が、自分へ移っていくような感覚だ。自分とレリウスは一つなのだと、まるでお互いの接する面が溶け合うかのように感じられ、ライラはそっと目を閉じる。
「私は、レリウス様がいてくだされば、誰かに何を言われても平気です。でも、私のせいでレリウス様が何かを言われたりするのは嫌なんです、だったら私はいない方が……」
「それでも、俺はライラがいてくれないと困る。ライラがいないことの方が何十倍も、何千倍も、苦しくて辛い。別に俺については誰が何を言おうとどうでもいい。今更始まったことじゃない。だからライラは気にしないでいいんだ」
「レリウス様……」
「一緒に帰ろう、ライラ。どんなことがあっても、ライラは俺が守る。絶対に幸せにする。だから、一緒に屋敷へ帰ろう」
レリウスがそっとライラの顔を覗き込むと、ライラはレリウスの月のような金色の瞳をじっと見つめた。風が吹き、ふわりとレリウスの艶やかな黒髪と銀細工のピアスが靡く。
「ひとつだけ、わがままを言ってもいいですか?」
「なんだ?」
レリウスが尋ねると、ライラはすこし頬を赤らめて口を開いた。
「……狼姿の、レリウス様の背中に、乗って帰りたいです」
ぼそっとライラがつぶやく。その言葉を聞いて、レリウスは嬉しそうに笑った。
「ああ、もちろんだ」
白狼王の生贄としてやってきた不遇な贄姫は、生贄になることなく黒狼の第三王子の番となり、黒狼の王子に溺愛され生涯幸せに暮らしたのだった。黒狼王子の屋敷からは、いつも楽しそうな笑い声が絶えなかったという。



