◆
「レリウス様はどうして人間風情の私なんかに、こんなによくしてくださるんでしょうか」
レリウスの屋敷で過ごすのも当たり前のようになってきたとある日、ライラはふと気になっていたことをベリックに聞いてみた。
「そうですね……ライラ様、狼人族の髪の毛、つまり毛並みは、基本的に白銀色と決まっています。ですが、レリウス様は黒。黒い狼は突然変異で生まれることがあり、それは王家の血筋の中でのみ。過去に生贄としてやってきた人間がまれに王と番になることがあって、その血が突然変異で現れる、と言われています。だから、レリウス様は王家の中では異質な存在なんです」
「異質な、存在……」
静かに呟くライラの瞳を、真剣な眼差しでベリックは見つめた。
「第一王子と第二王子は白銀色の毛並みですが、レリウス様だけは真っ黒です。そのことについて、王も王妃も王子たちも別にとやかく言うことはありません。ですが、王家に長年使える者の中には、頭が凝り固まった者もいます。人間族の混じった狼など、王家の血筋にふさわしくないと。レリウス様は小さな頃からそういう目で見られてきました。だから、第二王女であるにもかかわらず酷い扱いを受けてきたあなたをほおっておくことができなかったのでしょう」
(レリウス様も、ずっと異質な目で見られていた……)
ライラは胸の前でぎゅっと両手を握り締める。
「ここにいる者たちは、自分も含めて戦などで身寄りが無くなった者たちばかりです。居場所がない我々を、第三王子であるレリウス様は屋敷に引き取り、仕えさせてくださった。だから居場所が無くレリウス様に引き取られたライラ様も、まぎれもなくここの一員なのですよ」
ふわっと優しく微笑むベリックに、ライラは胸が熱くなり、じんわりと涙腺が緩むのを感じる。
「レリウス様は本当にお優しい方なんですね」
「そうですね、とてもお優しく、お強く、聡明な方です」
そう言って、ベリックはライラの顔にかかった髪の毛を優しく耳にかける。ベリックの優しさにも心がさらに熱くなり、ライラの目頭には涙がじんわりと浮かび上がってきた。
「レリウス様はどうして人間風情の私なんかに、こんなによくしてくださるんでしょうか」
レリウスの屋敷で過ごすのも当たり前のようになってきたとある日、ライラはふと気になっていたことをベリックに聞いてみた。
「そうですね……ライラ様、狼人族の髪の毛、つまり毛並みは、基本的に白銀色と決まっています。ですが、レリウス様は黒。黒い狼は突然変異で生まれることがあり、それは王家の血筋の中でのみ。過去に生贄としてやってきた人間がまれに王と番になることがあって、その血が突然変異で現れる、と言われています。だから、レリウス様は王家の中では異質な存在なんです」
「異質な、存在……」
静かに呟くライラの瞳を、真剣な眼差しでベリックは見つめた。
「第一王子と第二王子は白銀色の毛並みですが、レリウス様だけは真っ黒です。そのことについて、王も王妃も王子たちも別にとやかく言うことはありません。ですが、王家に長年使える者の中には、頭が凝り固まった者もいます。人間族の混じった狼など、王家の血筋にふさわしくないと。レリウス様は小さな頃からそういう目で見られてきました。だから、第二王女であるにもかかわらず酷い扱いを受けてきたあなたをほおっておくことができなかったのでしょう」
(レリウス様も、ずっと異質な目で見られていた……)
ライラは胸の前でぎゅっと両手を握り締める。
「ここにいる者たちは、自分も含めて戦などで身寄りが無くなった者たちばかりです。居場所がない我々を、第三王子であるレリウス様は屋敷に引き取り、仕えさせてくださった。だから居場所が無くレリウス様に引き取られたライラ様も、まぎれもなくここの一員なのですよ」
ふわっと優しく微笑むベリックに、ライラは胸が熱くなり、じんわりと涙腺が緩むのを感じる。
「レリウス様は本当にお優しい方なんですね」
「そうですね、とてもお優しく、お強く、聡明な方です」
そう言って、ベリックはライラの顔にかかった髪の毛を優しく耳にかける。ベリックの優しさにも心がさらに熱くなり、ライラの目頭には涙がじんわりと浮かび上がってきた。



