ヴァンパイアに狙われています!〜運命は危険な出会い〜

「さっきからめちゃくちゃ美味しそうな匂いがするんだよね。今まで嗅いだことない、あまい匂いがさ」


「そ、それって…?」


自分から聞いたけれど、何のことかはしっかりと分かり切っていた。


彼が今何を求めているか。


だって、皇くんは“ヴァンパイア”なのだから。


「もちろん、夢乃の…血の匂い」


くすくすと笑う皇くんを見て、私は恐怖を覚える。


このまま血を吸われるのだと思った。


そんなの…嫌…!


けれど、私の予想は幸運にも的中することはなかった。


「俺に堕ちたら、もっと甘いんだろうな〜。くすっ、楽しそう」


無邪気に笑う子供のようなその顔は、偽りのようでやはり怖い。


私をもてあそんでいるかのようだった。


皇くんは何もすることなく私をひざからおろし、ドアの方へ歩いて行ってドアノブに手をかける。


「じゃあ俺、夢乃のこと全力で堕とすから。覚悟しとけよ?」


「は…え…?」


そう言って私の部屋から出ていった。


皇くんが出て行ってから、すぐに布団に潜り込む。


あんなの絶対おかしい。


私はドキドキなっている鼓動を無視するようにぎゅっと目を瞑り、そのまま深い眠りに落ちていった。