裏社会の私と表社会の貴方との境界線

次の日から、私達の関係には当然のように変化があった。
でも、それは決して悪い方向にはいかなかった。
そのことにホッとしている。
ツキとは前より一緒にいるようになったし、距離感も近くなった。
——まるで恋人みたい。
そんなことを思う日々も多くあった。
それから数日後の朝。
「華恋、水筒忘れてる」
「へっ…?あれ、本当だ…。ありがとう、ツキ」
私はツキから水筒を受け取る。
その時、お互いの手が触れた。
「ずっと触れられたらいいのに」
不意にそんなことを言うから、心臓に悪い。
そして、ユウが面白くなさそうな顔で近づいてくる。
「ふたりとも付き合ってんのかよ〜ってくらいな雰囲気、どうにかならないのかよ」
「知らないわよ。それに、ユウには関係ないから」
あの日からツキのことも意識するようになった。
ツキが苦手だったあの頃が、嘘みたいに感じる。
そうして、私達はいつものように学校へ向かった。
ーーーーー
視線が痛い…。
昼休みになり、私はいつものように真白達とご飯を食べている。
いつもは楽しくしゃべっているのに、なぜこんなにも空気が重いのか。
原因私なのかしら?
前に座る真白はムスッとした表情をしていた。
「あのさ、どうして斗亜はそんなに不機嫌なの?いったいなにがあったって言うのさ。もしかして華恋にフラれた?」
「ゴホッ、ゴホッ…」
ついむせてしまった。
その反応を見て、千智が言う。
「へぇ〜、華恋ちゃんにフラれちゃったのかぁ!残念だね、よしよし」
ニヤニヤにているあたり、そうではないとわかっているのだろう。
つまり、真白をからかっているだけだ。
「別に、違うし」
うーん、さらに不機嫌?
といっても、私はなにをすればいいのよ!
雰囲気が気まずくて、不意に外を見る。
とてもいい天気で輝いて見える青空にの中に、鳥が飛んでいる。
そう、しっぽの燃えたレラのような鳥が……ってあれ?!
私は勢いよく立ちあがった。
木にとまっている鳥は、間違いなく不死鳥のレラだった。
「ごちそうさま!少し用事ができたわ!失礼するわね!」
私は大急ぎで裏庭に向かった。
ーーーーー
「レラ!何かあったの?!」
そう声をかけると、いつも通りすました声色で言った。
『レイ様より伝言を預かりましたゆえ、人間界に来ました。お時間よろしいですか?』
レイから伝言ってことは、計画がまとまったということだ。
やっとここまで来た。
私は手をにぎりしめる。
「わかったわ!私の部屋で、話を聞かせてちょうだい」
『感謝いたします』
そうして、私はレラと一緒に寮の部屋へ転移した。
自室にきた私は、レラに話しかける。
「それで?さっそくだけど、話を聞かせてちょうだい」
私はイスに腰をかける。
『今から申し上げること、一言一句聞き逃さぬようお願いいたします』
その丁寧な言葉遣いに、私は少しだけ息をのんだ。