裏社会の私と表社会の貴方との境界線

***


ここは…。


あ、そうだ。


(わたくし)はご当主様に呼ばれているのでしたわ。


早く行かなければ。


大好きな薔薇の香りがする。


ここはアイリス家の屋敷で、私はカレン・アイリス。


この家の使用人である。


真っ白な大理石の廊下を歩いて、私は御主人様の部屋に向かう。


何故呼ばれたのかは全く分からないが、何を言われようと使用人の私に拒否権など存在しないのだ。


死ねと言われれば死ぬ、その覚悟で私は日々生活を送っている。


正直、私の命や人生などどうでもいい。


だって、私は生まれてはいけない存在だったのだから。


歩いて行くと、御主人様の部屋が見えてきた。


御主人様の部屋の前にはふたりの男が立っている。


このふたりは常に当主様の部屋の前にいる見張り役である。


以前アイリス家の者を暗殺しようなどと考える(やから)がいたもので、その日からこのように警備はずっと行なっている。