ツキの荷物はすでにレンとユウが運んでいたようで、私の荷物を持つのを手伝ってくれた。
それから寮までの長い道を歩いて行き、レンとユウに会った。
「ごきげんようレン、ユウ。今日からよろしく」
レンはその言葉を聞くなり、無言で寮の中へ入って行った。
本当に感じの悪い子だ。
一方ユウはニヤリと笑い、私の髪を弄ぶように触ってきた。
「今日から華恋といられるとか最高じゃん」
相変わらずに考えの読めないユウと一緒なんて、こっちとしては吐き気がする。
口に出したら面倒なことになりそうなので、心の中で言う。
そう思ってキッとにらんでから手を振り払い、べーっと舌を出してやった。
「何やってんだか…。早く部屋に行ったらどうなの?」
私達の茶番を見たツキが止めに入った。
ツキに言われたなら仕方がないと言って、ツキの手を引いて私は寮の中に入って行った。
私達の部屋は3階にあり、ドアには「雨晴様 来夢様」と書かれているらしい。
裏社会一家と有名なメア家の名前を使えば、疑われかねない。
そこで、来夢という偽名の苗字を作ったそうだ。
由来はナイトメアからで、「悪夢が来る」ということから作ったみたい。
趣味悪い。
「あそこの部屋だよ」
ユウが、そう言って1番奥にあるきれいな木製の扉を指差した。
指を差された部屋の前に立って見ると、より一層扉の木目が見えてきれいに見える。
横目で右隣の部屋の名前を確認すると、「真白様」と書かれていた。
妙に引っかかる気がして記憶を掘り返してみると「真聖」という言葉が出てきた。
そうだ…真聖ノア!!
一瞬そんなことが脳裏をよぎった。
けれど漢字が違うので別人かもと思い、とりあえず忘れることにした。
ガチャ。
ドアを開けると、すごく爽やかな匂いがぶわっと部屋の中から出てきた。
どこか懐かしいような、そんな心地の良い匂い。
その心地よさを感じながら、リビングらしきところに歩いて行く。
予想通りで、そこはリビングだった。
すぐ右には大きくきれいな大理石のキッチンがあり、部屋の真ん中にはふかふかそうな緑色のソファ、その高さに合わせた丸いテーブル。
まさに、誰もが“いい部屋”と言いそうなほど完璧な寮部屋だった。
この部屋に住めるのが嬉しくなった。
「部屋は上なんだけど…てか邪魔」
リビングに見惚れていて気が付かなかったけれど、いつのまにかレンが後ろに立っていた。
「…ごめんなさいねー」
あんな言われ方は、私だってムカっときてしまう。
だからすっごく嫌味ったらしく言ってやった。
レンに舌打ちをされたが、聞こえないふりをして玄関の近くにある階段を登って2階に上がった。
何もあんな言い方しなくても良いのに!!
それに、できれば私は…レンとも仲良くしたいのに…。
それから2階に上がると、やけに広い廊下が目に映った。
人が2人並んでも平気なほどに広い廊下は一般人ならば異常とも思えるだろうが、今の私の家もこのくらいの広さなのであまり疑問をもたなかった。
右に3つ左にふたつの部屋があり、右の真ん中の部屋にのみ誰の名前も書かれていなかった。
それを見ておそらくここが私の部屋であろうと思い、部屋の扉を開く。
私の部屋はとても広く、勉強道具、服、コスメ、ベッド…などのたくさんのものがあった。
きっと雨晴のメイドや執事達が用意してくれたのだろう。
「まあ!素敵…!」
部屋を隅々まで見たり触ったりした後、持ってきた荷物を片付けた。
それから少し疲れたので、休もうとベッドに座った。
私ひとりしか寝ないというのにベッドはふたりくらい寝れそうな大きさで、とても心地の良い素材で作られていた。
もしかして…と嫌な想像をしたが、そんなわけないと自分に言い聞かせた。
今寝転がったら寝てしまいそう…。
そんなことを考えて寝てしまわないよう私は立ち上がり、せっかくなのでリビングでも行こうと部屋を出た。
バタンと音を立てて扉が閉まると同時に、ユウの声が聞こえた。
「片付け終わった〜?」
「ええ、終わったわよ」
そう言ってからユウを上目で見る。
ユウはいつものように呑気にあくびをしてしていて、思わずふふっと笑う。
正直、いろいろ不安だったけれど平気そうね。
「何笑ってんだ?…まあいいや、さっさと行くぞ」
私の腕をつかんで、強引にどこかへ連れて行こうとする。
わけがわからないと、ユウに抵抗する。
「え、ちょ?!待って、どこにいくのよ!」
戸惑っている私に、ユウはいつもの調子で「んー秘密」と答えた。
***
ユウは私を寮の部屋からスカイ学園校舎へと連れて行き、エレベーターに乗せられた。
さすが、と言うべきか…この探偵養成学校は国立の学園のため、校舎の造りにもだいぶ凝っているようだ。
エレベーターがある学校なんて、なかなかないだろうな。
どこに向かっているのか聞いても、どうせユウは答えてくれない。
そう思いながらボタンを確認すると、3階のボタンが黄色に光っているのが見えた。
どうやら私達は3階に向かっているようだ。
数秒後チンッという音が鳴り、扉が開くとユウがエレベーターを降りた。
それを見ていそいそと私も降りてから、周りにある部屋を見る。
目の前の部屋は「学園長室」のようだ。
ここに用があるのか、ユウは学園長室に近づき、コンコンと扉をノックした。
そういえば、学園長に会うように言われてたけ…?
そして私はお父様に言われた言葉を思い出す。
確かクラス分けがまだ決まっておらず、学園長と決めてくれというような事を言っていたような気がする。
「失礼します。来夢ユウと雨晴華恋です」
ユウの珍しく冷静な声にハッと顔をあげる。
それから、しっかりしなきゃ…!と気を引き締める。
「どうぞ」
よく響く冷静な女性の声が、部屋から聞こえてきた。
おそらく学園長の声だろう。
声色が不機嫌そうに聞こえたので、どんな人なのだろうと緊張が走る。
そんな状態の私を無視し、扉を開けてユウが中へ入って行った。
続いて私も「失礼します」と言って学園長室に入る。
学園長室はシンプルな部屋だった。
左右には本や卒業生の写真集、資料などが入ったガラス棚。
真ん中には、向き合っている紺色のソファ。
奥には大きめのデスクがあり、30代前半ほどの女性が座っていた。
その女性は立ち上がり、ソファを指さして言った。
「そこのソファに座ってください。来夢さん、雨晴さん」
少し怖そうな雰囲気のあるこの方の指示に従った方がいいと判断して、私はユウの手首をつかんでソファに一緒に座るよう言った。
私は見慣れない部屋を見渡すようなふりをして、とある書類を探しながら座った。
“書類”というのは、このスカイ学園の在学生の情報が全て入ったファイルのことである。
雨晴で調べた情報で、生徒達の全ての情報が入っているファイルを保管しているそう。
これがあれば「真聖ノア」という人物を容易に見つけることが出来るだろうと、私は考えている。
だが、先ほど見た中にはそれらしき書類ファイルは見つからなかった。
こんなに簡単な場所に隠したりはしていないだろうと踏んでいたが…。
ふと目の前を見ると、私達を真っ直ぐに見る学園長がいつの間にか座っていた。
学園長は美しい茶髪の髪をポニーテールにしていて、耳には青く輝く宝石のついたピアスをしていた。
「そんなに緊張しないでください。とりあえず、おふたりとも座っては?」
学園長は私が緊張したことで落ち着かなく、辺りを見回していたと勘違いしたみたいだ。
まあ、こちらにとってはその勘違いはとても好都合だが。
大事なファイルを探しているなんて知られたら、大変だろうから。
「雨晴なら大丈夫ですよー。それより、なんでここに呼んだんですかー?」
ユウは先生に対しても態度を変えず、能天気な奴だ。
「雨晴なら大丈夫」と言ったのは、私が何をしていたか分かっていたからだろう。
ユウにはなぜか、いつも私の行動が筒抜けになってしまうようだ。
「クラス分けとペア組みについてお話がしたくてお呼びしました」
この学園ではペアの人と一緒に受ける授業が多いそうで、私達もペアを決めないといけないみたいだ。
私とユウでペアを組むのかと思うと、少し嫌気がする。
「先ほどいらしたツキさんとレンさんはふたりでペアを組むと言っていたので問題はないのですが…今在学中の生徒のなかに、ペアを組めていない方がふたりいるのです」
「?ペアは、初めの登校日に決めるはずでは?」
この学園はペア組みは必須なので、学園の最初の授業が始まる前…つまり、最初の登校日の放課後までに決めるよう言われているはずだ。
何かあったのだろうか。
「…重傷を負い、入院している生徒がひとり。それと問題を起こし、退学になった生徒がひとりいるのです。そのためペアを組めていないふたりに組んでもらうようお願いしたのですが…」
「断られてしまった、と」
図星のようで、学園長は私から目をそらした。
その表情は、少し動揺しているようにも見えた。
「それで?その生徒達と俺らに組んでほしいっていう話っすか〜?」
この暗い空気をどうにかしようと、ユウが話を繋げてくれたのだ。
私は目で「ありがとう」と伝えたら、ユウはニコッと笑いかけてくれた。
ユウのこういうところだけは好きなのだけれど…。
失礼だけど、何か見返りを求められそうで嫌。
「まあ、そういうことです。どうですかね?お願いできますでしょうか」
学園長も困っているようだし、それに私のペアは別に誰でもいいだろうと思った。
それに、このユウとペアを組むよりマシだろう。
「「もちろん」」
私とユウの声が重なった。
それから出来れば男女で組んでほしいということだったので私が男の子の方と、ユウは女の子と組むことになった。
学園長からペアのプロフィール書を受け取り、目を通す。
私のペアの名前は「真白斗亜」という子で、学園1の優秀生徒だそうだ。
そういえば、隣の部屋は真白と書かれていた。
つまり、お隣さん。
すごい縁だなとこの時は思っていた。
私は知らなかった。
全て仕組まれていたことだったということを。
それから寮までの長い道を歩いて行き、レンとユウに会った。
「ごきげんようレン、ユウ。今日からよろしく」
レンはその言葉を聞くなり、無言で寮の中へ入って行った。
本当に感じの悪い子だ。
一方ユウはニヤリと笑い、私の髪を弄ぶように触ってきた。
「今日から華恋といられるとか最高じゃん」
相変わらずに考えの読めないユウと一緒なんて、こっちとしては吐き気がする。
口に出したら面倒なことになりそうなので、心の中で言う。
そう思ってキッとにらんでから手を振り払い、べーっと舌を出してやった。
「何やってんだか…。早く部屋に行ったらどうなの?」
私達の茶番を見たツキが止めに入った。
ツキに言われたなら仕方がないと言って、ツキの手を引いて私は寮の中に入って行った。
私達の部屋は3階にあり、ドアには「雨晴様 来夢様」と書かれているらしい。
裏社会一家と有名なメア家の名前を使えば、疑われかねない。
そこで、来夢という偽名の苗字を作ったそうだ。
由来はナイトメアからで、「悪夢が来る」ということから作ったみたい。
趣味悪い。
「あそこの部屋だよ」
ユウが、そう言って1番奥にあるきれいな木製の扉を指差した。
指を差された部屋の前に立って見ると、より一層扉の木目が見えてきれいに見える。
横目で右隣の部屋の名前を確認すると、「真白様」と書かれていた。
妙に引っかかる気がして記憶を掘り返してみると「真聖」という言葉が出てきた。
そうだ…真聖ノア!!
一瞬そんなことが脳裏をよぎった。
けれど漢字が違うので別人かもと思い、とりあえず忘れることにした。
ガチャ。
ドアを開けると、すごく爽やかな匂いがぶわっと部屋の中から出てきた。
どこか懐かしいような、そんな心地の良い匂い。
その心地よさを感じながら、リビングらしきところに歩いて行く。
予想通りで、そこはリビングだった。
すぐ右には大きくきれいな大理石のキッチンがあり、部屋の真ん中にはふかふかそうな緑色のソファ、その高さに合わせた丸いテーブル。
まさに、誰もが“いい部屋”と言いそうなほど完璧な寮部屋だった。
この部屋に住めるのが嬉しくなった。
「部屋は上なんだけど…てか邪魔」
リビングに見惚れていて気が付かなかったけれど、いつのまにかレンが後ろに立っていた。
「…ごめんなさいねー」
あんな言われ方は、私だってムカっときてしまう。
だからすっごく嫌味ったらしく言ってやった。
レンに舌打ちをされたが、聞こえないふりをして玄関の近くにある階段を登って2階に上がった。
何もあんな言い方しなくても良いのに!!
それに、できれば私は…レンとも仲良くしたいのに…。
それから2階に上がると、やけに広い廊下が目に映った。
人が2人並んでも平気なほどに広い廊下は一般人ならば異常とも思えるだろうが、今の私の家もこのくらいの広さなのであまり疑問をもたなかった。
右に3つ左にふたつの部屋があり、右の真ん中の部屋にのみ誰の名前も書かれていなかった。
それを見ておそらくここが私の部屋であろうと思い、部屋の扉を開く。
私の部屋はとても広く、勉強道具、服、コスメ、ベッド…などのたくさんのものがあった。
きっと雨晴のメイドや執事達が用意してくれたのだろう。
「まあ!素敵…!」
部屋を隅々まで見たり触ったりした後、持ってきた荷物を片付けた。
それから少し疲れたので、休もうとベッドに座った。
私ひとりしか寝ないというのにベッドはふたりくらい寝れそうな大きさで、とても心地の良い素材で作られていた。
もしかして…と嫌な想像をしたが、そんなわけないと自分に言い聞かせた。
今寝転がったら寝てしまいそう…。
そんなことを考えて寝てしまわないよう私は立ち上がり、せっかくなのでリビングでも行こうと部屋を出た。
バタンと音を立てて扉が閉まると同時に、ユウの声が聞こえた。
「片付け終わった〜?」
「ええ、終わったわよ」
そう言ってからユウを上目で見る。
ユウはいつものように呑気にあくびをしてしていて、思わずふふっと笑う。
正直、いろいろ不安だったけれど平気そうね。
「何笑ってんだ?…まあいいや、さっさと行くぞ」
私の腕をつかんで、強引にどこかへ連れて行こうとする。
わけがわからないと、ユウに抵抗する。
「え、ちょ?!待って、どこにいくのよ!」
戸惑っている私に、ユウはいつもの調子で「んー秘密」と答えた。
***
ユウは私を寮の部屋からスカイ学園校舎へと連れて行き、エレベーターに乗せられた。
さすが、と言うべきか…この探偵養成学校は国立の学園のため、校舎の造りにもだいぶ凝っているようだ。
エレベーターがある学校なんて、なかなかないだろうな。
どこに向かっているのか聞いても、どうせユウは答えてくれない。
そう思いながらボタンを確認すると、3階のボタンが黄色に光っているのが見えた。
どうやら私達は3階に向かっているようだ。
数秒後チンッという音が鳴り、扉が開くとユウがエレベーターを降りた。
それを見ていそいそと私も降りてから、周りにある部屋を見る。
目の前の部屋は「学園長室」のようだ。
ここに用があるのか、ユウは学園長室に近づき、コンコンと扉をノックした。
そういえば、学園長に会うように言われてたけ…?
そして私はお父様に言われた言葉を思い出す。
確かクラス分けがまだ決まっておらず、学園長と決めてくれというような事を言っていたような気がする。
「失礼します。来夢ユウと雨晴華恋です」
ユウの珍しく冷静な声にハッと顔をあげる。
それから、しっかりしなきゃ…!と気を引き締める。
「どうぞ」
よく響く冷静な女性の声が、部屋から聞こえてきた。
おそらく学園長の声だろう。
声色が不機嫌そうに聞こえたので、どんな人なのだろうと緊張が走る。
そんな状態の私を無視し、扉を開けてユウが中へ入って行った。
続いて私も「失礼します」と言って学園長室に入る。
学園長室はシンプルな部屋だった。
左右には本や卒業生の写真集、資料などが入ったガラス棚。
真ん中には、向き合っている紺色のソファ。
奥には大きめのデスクがあり、30代前半ほどの女性が座っていた。
その女性は立ち上がり、ソファを指さして言った。
「そこのソファに座ってください。来夢さん、雨晴さん」
少し怖そうな雰囲気のあるこの方の指示に従った方がいいと判断して、私はユウの手首をつかんでソファに一緒に座るよう言った。
私は見慣れない部屋を見渡すようなふりをして、とある書類を探しながら座った。
“書類”というのは、このスカイ学園の在学生の情報が全て入ったファイルのことである。
雨晴で調べた情報で、生徒達の全ての情報が入っているファイルを保管しているそう。
これがあれば「真聖ノア」という人物を容易に見つけることが出来るだろうと、私は考えている。
だが、先ほど見た中にはそれらしき書類ファイルは見つからなかった。
こんなに簡単な場所に隠したりはしていないだろうと踏んでいたが…。
ふと目の前を見ると、私達を真っ直ぐに見る学園長がいつの間にか座っていた。
学園長は美しい茶髪の髪をポニーテールにしていて、耳には青く輝く宝石のついたピアスをしていた。
「そんなに緊張しないでください。とりあえず、おふたりとも座っては?」
学園長は私が緊張したことで落ち着かなく、辺りを見回していたと勘違いしたみたいだ。
まあ、こちらにとってはその勘違いはとても好都合だが。
大事なファイルを探しているなんて知られたら、大変だろうから。
「雨晴なら大丈夫ですよー。それより、なんでここに呼んだんですかー?」
ユウは先生に対しても態度を変えず、能天気な奴だ。
「雨晴なら大丈夫」と言ったのは、私が何をしていたか分かっていたからだろう。
ユウにはなぜか、いつも私の行動が筒抜けになってしまうようだ。
「クラス分けとペア組みについてお話がしたくてお呼びしました」
この学園ではペアの人と一緒に受ける授業が多いそうで、私達もペアを決めないといけないみたいだ。
私とユウでペアを組むのかと思うと、少し嫌気がする。
「先ほどいらしたツキさんとレンさんはふたりでペアを組むと言っていたので問題はないのですが…今在学中の生徒のなかに、ペアを組めていない方がふたりいるのです」
「?ペアは、初めの登校日に決めるはずでは?」
この学園はペア組みは必須なので、学園の最初の授業が始まる前…つまり、最初の登校日の放課後までに決めるよう言われているはずだ。
何かあったのだろうか。
「…重傷を負い、入院している生徒がひとり。それと問題を起こし、退学になった生徒がひとりいるのです。そのためペアを組めていないふたりに組んでもらうようお願いしたのですが…」
「断られてしまった、と」
図星のようで、学園長は私から目をそらした。
その表情は、少し動揺しているようにも見えた。
「それで?その生徒達と俺らに組んでほしいっていう話っすか〜?」
この暗い空気をどうにかしようと、ユウが話を繋げてくれたのだ。
私は目で「ありがとう」と伝えたら、ユウはニコッと笑いかけてくれた。
ユウのこういうところだけは好きなのだけれど…。
失礼だけど、何か見返りを求められそうで嫌。
「まあ、そういうことです。どうですかね?お願いできますでしょうか」
学園長も困っているようだし、それに私のペアは別に誰でもいいだろうと思った。
それに、このユウとペアを組むよりマシだろう。
「「もちろん」」
私とユウの声が重なった。
それから出来れば男女で組んでほしいということだったので私が男の子の方と、ユウは女の子と組むことになった。
学園長からペアのプロフィール書を受け取り、目を通す。
私のペアの名前は「真白斗亜」という子で、学園1の優秀生徒だそうだ。
そういえば、隣の部屋は真白と書かれていた。
つまり、お隣さん。
すごい縁だなとこの時は思っていた。
私は知らなかった。
全て仕組まれていたことだったということを。


