カレン・アイリス。
それは、今では思い出の中だけの名前。
前世の世界では、魔法というものは当たり前にあるものだった。
その中でも格別なのは大魔法使い一家であるアイリス公爵家(こうしゃくけ)。
そう言われているのは、魔力量が非常に多い者にしか扱えない「伝説の杖(つえ)」を代々扱ってきたからだ。
その圧倒的魔力は神とさえ言われ、長年信仰されてきた。
そんな大魔法使い一家アイリス公爵家には、ある日双子が生まれた。
レンカとカレン。
二卵性であり容姿は全く異なったが、両親には大切に育てられてきた。
けれど、それは3歳の誕生日を迎えたあの日変わってしまった。
3歳になると、魔力量の測定が行われる。
アイリス家は魔力量が多すぎるので、必ずエラーが出てしまう。
だから、レンカの魔力量測定にエラーが出たのは普通のこと。
けれど私は違った。
「い、E判定です…」
そう響いた声に、お父様の瞳はもう私への興味をなくしていた。
判定は1番下。
魔力量はほぼ無いに等しかった。
それから、私の存在は隠された。
アイリス家に生まれたのは双子の女の子ではなく、ひとりの女の子だったと。
魔力の少ない私は必要なくなってしまった。
それから、私は捨てられた。
その頃からすでにアイリス家の使用人として様々なことを学んだ。
私は勉学でも劣(おと)っていた。
全教科満点、コンクールでは金賞を受賞する完璧な姉とは違った。
絶対に何かを間違えてしまう。
どうしたって天才にはなれなかった。
そうして、私の心はボロボロになっていった。
周りの人間にはコソコソと言われ、使用人にはいじめられ、父親には娘として見られない。
そんな毎日を続けていたからか、もう何も感じなくなってしまった。
でも、ある日その感情は突然戻ってきた。
あの日真鈴に出会ったから。
ーーーーー
夜遅くまで仕事をしていると、フードをかぶった女性に出会った。
キョロキョロとしながら敷地(しきち)を歩いていたので、私は彼女に声をかけた。
「あの、ここはアイリスの敷地内です。迷い人でございましょうか。でしたら、すぐに主人をお呼びいたしますが…」
「あら、ごめんなさいね。迷っているわけではありませんの。ただ、人を探しております。ここに、カレン・アイリスはいらっしゃらない?」
「カレン…ですか?間違いなくカレン?」
私はとっさに聞き返してしまった。
私に用があるなんて思えない。
きっとレンカと間違えているのだと、そう思ったから。
「ええ。知っていますの?」
「……私がカレン・アイリスです」
「そうなのね。まあ、知っていたけれど」
「え…?」
その言葉の意味を聞く前に、私はその場で固まってしまった。
目の前の女性はフードをとって姿をあらわにした。
「私は真鈴。カレン、貴女に出会うためにこの場所に来たの」
にこりと笑った真鈴に私は救われた気がした。
その日から私は毎日を真鈴と共に過ごした。
嫌なことがあるとすぐに真鈴に言って、辛さを乗り越えてきた。
数週間が経ってから、私が女神であったことを知った。
魔力が少ないと言われた私が女神なんて信じられなかったけれど、そう認めるに値する根拠があったので認めた。
黄泉に出会ったのもその時で、私は彼女に女神だと指摘された。
それから、レイにも会って死にたくなければ自分の存在は隠し通すことと言われた。
私の国では長い年月、女神を探しているからだ。
見つかれば、何をされるか分からない。
真鈴がいたから隠し通せたし、普通に生活ができた。
けれど、真鈴がこの世から消えて私はまたひとりになった。
後悔した、後悔してもしきれなかった。
悲しい、苦しい、誰か助けて。
私は闇の中に深く深く落ちていった。
約1年。
私はひとりになった。
それは、今では思い出の中だけの名前。
前世の世界では、魔法というものは当たり前にあるものだった。
その中でも格別なのは大魔法使い一家であるアイリス公爵家(こうしゃくけ)。
そう言われているのは、魔力量が非常に多い者にしか扱えない「伝説の杖(つえ)」を代々扱ってきたからだ。
その圧倒的魔力は神とさえ言われ、長年信仰されてきた。
そんな大魔法使い一家アイリス公爵家には、ある日双子が生まれた。
レンカとカレン。
二卵性であり容姿は全く異なったが、両親には大切に育てられてきた。
けれど、それは3歳の誕生日を迎えたあの日変わってしまった。
3歳になると、魔力量の測定が行われる。
アイリス家は魔力量が多すぎるので、必ずエラーが出てしまう。
だから、レンカの魔力量測定にエラーが出たのは普通のこと。
けれど私は違った。
「い、E判定です…」
そう響いた声に、お父様の瞳はもう私への興味をなくしていた。
判定は1番下。
魔力量はほぼ無いに等しかった。
それから、私の存在は隠された。
アイリス家に生まれたのは双子の女の子ではなく、ひとりの女の子だったと。
魔力の少ない私は必要なくなってしまった。
それから、私は捨てられた。
その頃からすでにアイリス家の使用人として様々なことを学んだ。
私は勉学でも劣(おと)っていた。
全教科満点、コンクールでは金賞を受賞する完璧な姉とは違った。
絶対に何かを間違えてしまう。
どうしたって天才にはなれなかった。
そうして、私の心はボロボロになっていった。
周りの人間にはコソコソと言われ、使用人にはいじめられ、父親には娘として見られない。
そんな毎日を続けていたからか、もう何も感じなくなってしまった。
でも、ある日その感情は突然戻ってきた。
あの日真鈴に出会ったから。
ーーーーー
夜遅くまで仕事をしていると、フードをかぶった女性に出会った。
キョロキョロとしながら敷地(しきち)を歩いていたので、私は彼女に声をかけた。
「あの、ここはアイリスの敷地内です。迷い人でございましょうか。でしたら、すぐに主人をお呼びいたしますが…」
「あら、ごめんなさいね。迷っているわけではありませんの。ただ、人を探しております。ここに、カレン・アイリスはいらっしゃらない?」
「カレン…ですか?間違いなくカレン?」
私はとっさに聞き返してしまった。
私に用があるなんて思えない。
きっとレンカと間違えているのだと、そう思ったから。
「ええ。知っていますの?」
「……私がカレン・アイリスです」
「そうなのね。まあ、知っていたけれど」
「え…?」
その言葉の意味を聞く前に、私はその場で固まってしまった。
目の前の女性はフードをとって姿をあらわにした。
「私は真鈴。カレン、貴女に出会うためにこの場所に来たの」
にこりと笑った真鈴に私は救われた気がした。
その日から私は毎日を真鈴と共に過ごした。
嫌なことがあるとすぐに真鈴に言って、辛さを乗り越えてきた。
数週間が経ってから、私が女神であったことを知った。
魔力が少ないと言われた私が女神なんて信じられなかったけれど、そう認めるに値する根拠があったので認めた。
黄泉に出会ったのもその時で、私は彼女に女神だと指摘された。
それから、レイにも会って死にたくなければ自分の存在は隠し通すことと言われた。
私の国では長い年月、女神を探しているからだ。
見つかれば、何をされるか分からない。
真鈴がいたから隠し通せたし、普通に生活ができた。
けれど、真鈴がこの世から消えて私はまたひとりになった。
後悔した、後悔してもしきれなかった。
悲しい、苦しい、誰か助けて。
私は闇の中に深く深く落ちていった。
約1年。
私はひとりになった。


