「どう?美味しい?」
謎肉とやらと食べる真白の姿を見て、私は彼に聞いた。
だって味は気になるもの。
「んー、多分?味付けは塩かな〜」
「多分って何よ、全くもう…」
はっきりしない回答にあきれながら、私は食事を再開する。
少し経った後、真白がはしを置いて私に言った。
「なんかごめんね」
「え?何が?」
「いろいろ巻き込んじゃってさ。雨晴の負担も大きいだろ?」
そういうことか、となっとくした。
人の心配をするところ、そういう優しさが私にはとても嬉しい。
「いいのよ、気にしなくて。貴方達を見てるとね、なんだか昔に自分を見てる気分になるの」
「昔の…雨晴?」
「そう」
前世私は家柄こそ高かったものの、生活は最悪なものだった。
家族として扱われず死にたいとさえ願う毎日。
カレン・アイリスとして見られるのではなく、魔力の少ない子として見られる。
比較される。
それが嫌だったけど、いつしかそんな感情も忘れた。
「嫌なことがあるとね、死にたいとさえ願ったわ。でも、そうはしなかった。私の生きる理由は親友のためだった。貴方達は兄妹のためよね。同じだわ。同じ目をしてる」
真白の目を真剣な顔で見た。
その瞳には苦しみと後悔と、兄妹への深い愛情がある。
いい道を進んでいるのね。
「それって…」
「ごめんなさい。今話す勇気はないわ。でも今、ただひとつ言えることがあるとすれば…」
それは、彼らをはげます言葉。
「今の道を進みなさい。妹を、弟を信じなさい。今の時間を大切にしなさい、有限のこの時間を」
これは、はたして真白に対して言っていたのだろうか。
自分にかもしれない。
私の時間は有限で、18歳を迎えれば必ず死が近くなる。
後悔はしてほしくない。
この子達の人生は一度きりなんだから。
「うん、うん。ありがとう…」
泣きそうな真白をみて、優しく笑いかけるのが限界だった。
あと少し、自分の役割を全うしなければ。
ーーーーー
その日の夜、私は覚悟を決めて琉愛の入院している病院に来た。
コンコン。
「…だあれ?」
「華恋よ。入ってもいいかしら?」
琉愛にそう問いかけると、静かになってしまった。
返事が返ってこない。
これは、入っていいということなのかしら。
「入るわね」
そう言って、私は琉愛のもとへいった。
私が隣に立っても何も言わず、ただただ窓の外の景色を見ているだけだった。
ベッドの横にあったイスに座る。
それから数分が経って、彼女が口を開いた。
「なんの用があって来たの?しかも1人で」
「…貴女には、伝えなくちゃと思ってね」
「何を?」
その時、琉愛は初めて私の方を見た。
相変わらずの表情。
その表情にひるまず、私は琉愛に言った。
「知りたいんでしょう?私の過去を。あとは、貴女に伝えたいことがあったから」
過去を調べられていたことを知っていた。
きっと、同じ環境にいる私に興味を持ったのだろう。
私はそれに不快感を覚えた。
なら、彼女に私から話そう。
少しでもそれが彼女の助けになるのなら、喜んで聞かせてあげよう。
「聞く。教えて」
「ええ、分かったわ。よく聞くのよ」
私は語り出した。
それと同時に、真白との通話を始めた。