まだ驚きで、どこを見ているのか分からないユウとツキ。
私もまた、どう説明すべきか迷っていた。
その時ふと、ツキが口を開いた。
「さっきのは…」
この言葉を利用しない手はなかった。
そして、私は話を切り出した。
「全部初めから説明するわ。とにかく座って」
「あ、うん…」
少し長くなるだろう思い、2人を座らせた。
さすがに、ずっと立ちっぱなしは辛いだろうから。
「2人は…『禁忌の書庫』って知ってる?」
2人は顔を見合わせた。
「ああ、知ってる。雨晴別邸の地下にある書庫だろ?」
その通り。
私の別邸の地下には、何重にも鍵がしてある書庫がある。
そこは、誰も立ち入ることができない。
禁忌の書庫と言われているのは、この世界の禁忌について書かれた本が収納されているから。
その内容はメア家の人間が、真聖家の人間のみ見ることができる。
ただ、サクが禁じているので、裏社会では禁忌に触れてはいけない決まり。
「そうよ。それともうひとつ、『入ろうとしたら何かに跳ね返された』という話を聞いたことはない?」
「あのよく分かんない噂のことだね」
そんなことがあるわけない、と思うところだろう。
けれど、残念ながらそれは本当のこと。
その書庫には、結界がはってある。
一度だけ近くまで見に行ったのだが、それは確かに結界でルピナスの魔力を感じた。
つまり、結界をはったのはルピナスということだ。
おそらく私の情報があって、慌てて結界をはったのだろう。
とてもありがたいことだ。
簡単な結界しかはられていなかったので、私が複雑に強化しておいたのだ。
「それは本当のことなの」
「…どうしてそう思うの?」
「だって、そこに結界をはったのは華お姉ちゃんと…私だもの」
私は隠そうとせず、素直にそれを伝えた。
誤魔化したって、いつかは言わなければならないのだから。
「結界ってなんだよ。それにさっきも思ったんだけど、なんで華恋が華さんのこと知ってるんだよ」
「それを今から説明するのよ」
ユウも華お姉ちゃんのことを聞かされていることが分かった。
そして、本当は私は華お姉ちゃんの存在を知らないはずなのだ。
雨晴の3つ子には隠されていること。
でも、その頃の記憶がある私は知っている。
「ちょっと待ってね」
そう言って、後ろにある棚の引き出しを引く。
中に入っている巻物のような物を取り出した。
それは、この世界でいう“禁忌”が書かれた物。
「これと同じ物が、禁忌の書庫にもあるの」
その巻物を広げて見せた。
「は?それを取ってきたってことか?!」
「いいえ、違うわ。これは、もともとこの引き出しに入っていた物なの」
「…わけわかんねー」
まあ、そうなるのも無理はない。
それと同時に、おかしなことが起こりすぎて納得してしまっているような気もする。
「これは女神の禁忌の伝承。これに私がのっているの」
「待って、ちょっと…本当に今のは意味わかんない。女神?華恋がのってる?」
慌てて私の話を止めるツキ。
まあ、そこから説明してあげた方がいいのか。
「女神は人間に幸福をもたらす存在。例えば治癒の能力を持っていたり、姿は同じでも人間とは次元の違う者のことね」
「そんなの御伽話とかだけだろ?」
「いいえ、実際に存在するの。すぐには受け入れられないとは思ってるけど、今は聞いてほしい」
「「…」」
少しの間黙った後、静かに頷いてくれた。
私は2人の行動を見て、私は大好きだったあの笑顔を浮かべた。
***
2人とも気まずそうに黙ってしまった。
仕方がいないわよね?
そう言い聞かせて、話を進める。
「私は今世が2度目の人生なの。女神はね、死なないの」
私は人差し指を口に当てて、「しー」とやった。
「よくある御伽話と同じってことだよね?女神は転生するとか、そういう…」
あまり信じていない様子だったけれど、ありえないことが起こって信じるしかないという感じ。
信憑性がないのは仕方がない。
この世界では魔法がないからね。
「そういうことよ。前世で死んでしまった私は、この体に転生してきたの」
「いつ?」
「は?」
私の説明に、すかさず質問を入れてきたツキ。
ユウが情けない声をもらしてくれたから、冷静を保つことができた。
「2歳の時よ。ちなみに日付は12月27日」
「そっか…だから華さんのことを知ってるんだね」
ツキが何を聞きたいのか、ようやく分かった。
「あ〜そゆこと。え、それって記憶あるもんなの?」
いくらマフィアの記憶がいいといっても、そんな小さい頃の記憶はないわよね。
でも、私は違う。
「私は前世を18歳で終えたの。この体になった時も、心は18歳のままよ」
「…」
私は目を伏せて、少しだけ昔のことを思い出した。
約20年前の事だけれど、鮮明に全て思い出せる。
カレン・アイリスを呪った日々を。
私の目から、いつのまにか涙が出ていた。
「…ごめんなさい。あまり気にしないでね。いい思い出があまりないの、前世では」
今はちょっと教えてあげられない、昔の話。
ツキもユウも何も言わなかった。
多分、気をつかってくれたんだと思う。
「話を戻すわね」
2人がコクっと頷いた。
「改めて自己紹介するわ。初めまして、私は…女神No.1のカレン。幻想を現実に引き出すことができる女神よ」
「…情報量多すぎだろ。なんとか理解…はできたけどさ〜」
理解できるんだ、と思った。
質問責めにあうだろうと思ってたけど、大丈夫だったらしい。
ツキは何か考え込んでいる様子だけれど。
「それってさ…本当にできるなら、すごい能力なんじゃないの?」
「…その通りね。この能力は、なんでもかんでもありって感じだから。現に女神の中で1番強いのも、私だし」
想像力さえあれば、なんでも現実にできる。
ただし、世界のルールを変えたりすることはできない。
神ですら、それができるのは黄泉神だけ。
「他に能力を知っている人はいるの?」
「いいえ、あーでも華お姉ちゃんには話したけどね。あの人も女神だから」
「「え?」」
拍子抜けしたように、ぽかんとしている。
そっか、言っていなかったのか。
「華お姉ちゃんの本名はルピナス。能力は“透視の瞳”で、目を合わせれば相手の全てが分かるの」
「やば…それもそれですげー能力だな」
「だって、女神は神だよ?」
神と人間は何もかもが違う。
神に支配されるしかない人間達によっているのか、女神と天使と言われるもの。
黄泉神と悪魔は、常に人間を見下して遊んでる。
「私達と人間じゃ違うのよ、なにもかも。でも、私は人間と分り合いたいわ。じゃあ、禁忌の書庫に行くわよー」
2人の腕をひいて立ち上がらせる。
「はー?禁忌の書庫は結界がはってあんだろ?どうやって入るんだよ」
「え?結界なんてすぐ壊せるし、はりなおせるよ?」
私はきょとんとした顔でユウに言った。
すると、ツキとユウは顔を見合わせて苦笑いする。
「あーうん。華恋はそういうやつだった」
「よく分からないわね、あなた達」
「「こっちのセリフだ」」
その言葉に、私達は笑い出した。
なんだか面白かった。
その時、ふと視線を感じて。
「お姉ちゃん、私…」
いつのまにか目を覚ましていた瑠璃華は、青白い顔をしていた。
私もまた、どう説明すべきか迷っていた。
その時ふと、ツキが口を開いた。
「さっきのは…」
この言葉を利用しない手はなかった。
そして、私は話を切り出した。
「全部初めから説明するわ。とにかく座って」
「あ、うん…」
少し長くなるだろう思い、2人を座らせた。
さすがに、ずっと立ちっぱなしは辛いだろうから。
「2人は…『禁忌の書庫』って知ってる?」
2人は顔を見合わせた。
「ああ、知ってる。雨晴別邸の地下にある書庫だろ?」
その通り。
私の別邸の地下には、何重にも鍵がしてある書庫がある。
そこは、誰も立ち入ることができない。
禁忌の書庫と言われているのは、この世界の禁忌について書かれた本が収納されているから。
その内容はメア家の人間が、真聖家の人間のみ見ることができる。
ただ、サクが禁じているので、裏社会では禁忌に触れてはいけない決まり。
「そうよ。それともうひとつ、『入ろうとしたら何かに跳ね返された』という話を聞いたことはない?」
「あのよく分かんない噂のことだね」
そんなことがあるわけない、と思うところだろう。
けれど、残念ながらそれは本当のこと。
その書庫には、結界がはってある。
一度だけ近くまで見に行ったのだが、それは確かに結界でルピナスの魔力を感じた。
つまり、結界をはったのはルピナスということだ。
おそらく私の情報があって、慌てて結界をはったのだろう。
とてもありがたいことだ。
簡単な結界しかはられていなかったので、私が複雑に強化しておいたのだ。
「それは本当のことなの」
「…どうしてそう思うの?」
「だって、そこに結界をはったのは華お姉ちゃんと…私だもの」
私は隠そうとせず、素直にそれを伝えた。
誤魔化したって、いつかは言わなければならないのだから。
「結界ってなんだよ。それにさっきも思ったんだけど、なんで華恋が華さんのこと知ってるんだよ」
「それを今から説明するのよ」
ユウも華お姉ちゃんのことを聞かされていることが分かった。
そして、本当は私は華お姉ちゃんの存在を知らないはずなのだ。
雨晴の3つ子には隠されていること。
でも、その頃の記憶がある私は知っている。
「ちょっと待ってね」
そう言って、後ろにある棚の引き出しを引く。
中に入っている巻物のような物を取り出した。
それは、この世界でいう“禁忌”が書かれた物。
「これと同じ物が、禁忌の書庫にもあるの」
その巻物を広げて見せた。
「は?それを取ってきたってことか?!」
「いいえ、違うわ。これは、もともとこの引き出しに入っていた物なの」
「…わけわかんねー」
まあ、そうなるのも無理はない。
それと同時に、おかしなことが起こりすぎて納得してしまっているような気もする。
「これは女神の禁忌の伝承。これに私がのっているの」
「待って、ちょっと…本当に今のは意味わかんない。女神?華恋がのってる?」
慌てて私の話を止めるツキ。
まあ、そこから説明してあげた方がいいのか。
「女神は人間に幸福をもたらす存在。例えば治癒の能力を持っていたり、姿は同じでも人間とは次元の違う者のことね」
「そんなの御伽話とかだけだろ?」
「いいえ、実際に存在するの。すぐには受け入れられないとは思ってるけど、今は聞いてほしい」
「「…」」
少しの間黙った後、静かに頷いてくれた。
私は2人の行動を見て、私は大好きだったあの笑顔を浮かべた。
***
2人とも気まずそうに黙ってしまった。
仕方がいないわよね?
そう言い聞かせて、話を進める。
「私は今世が2度目の人生なの。女神はね、死なないの」
私は人差し指を口に当てて、「しー」とやった。
「よくある御伽話と同じってことだよね?女神は転生するとか、そういう…」
あまり信じていない様子だったけれど、ありえないことが起こって信じるしかないという感じ。
信憑性がないのは仕方がない。
この世界では魔法がないからね。
「そういうことよ。前世で死んでしまった私は、この体に転生してきたの」
「いつ?」
「は?」
私の説明に、すかさず質問を入れてきたツキ。
ユウが情けない声をもらしてくれたから、冷静を保つことができた。
「2歳の時よ。ちなみに日付は12月27日」
「そっか…だから華さんのことを知ってるんだね」
ツキが何を聞きたいのか、ようやく分かった。
「あ〜そゆこと。え、それって記憶あるもんなの?」
いくらマフィアの記憶がいいといっても、そんな小さい頃の記憶はないわよね。
でも、私は違う。
「私は前世を18歳で終えたの。この体になった時も、心は18歳のままよ」
「…」
私は目を伏せて、少しだけ昔のことを思い出した。
約20年前の事だけれど、鮮明に全て思い出せる。
カレン・アイリスを呪った日々を。
私の目から、いつのまにか涙が出ていた。
「…ごめんなさい。あまり気にしないでね。いい思い出があまりないの、前世では」
今はちょっと教えてあげられない、昔の話。
ツキもユウも何も言わなかった。
多分、気をつかってくれたんだと思う。
「話を戻すわね」
2人がコクっと頷いた。
「改めて自己紹介するわ。初めまして、私は…女神No.1のカレン。幻想を現実に引き出すことができる女神よ」
「…情報量多すぎだろ。なんとか理解…はできたけどさ〜」
理解できるんだ、と思った。
質問責めにあうだろうと思ってたけど、大丈夫だったらしい。
ツキは何か考え込んでいる様子だけれど。
「それってさ…本当にできるなら、すごい能力なんじゃないの?」
「…その通りね。この能力は、なんでもかんでもありって感じだから。現に女神の中で1番強いのも、私だし」
想像力さえあれば、なんでも現実にできる。
ただし、世界のルールを変えたりすることはできない。
神ですら、それができるのは黄泉神だけ。
「他に能力を知っている人はいるの?」
「いいえ、あーでも華お姉ちゃんには話したけどね。あの人も女神だから」
「「え?」」
拍子抜けしたように、ぽかんとしている。
そっか、言っていなかったのか。
「華お姉ちゃんの本名はルピナス。能力は“透視の瞳”で、目を合わせれば相手の全てが分かるの」
「やば…それもそれですげー能力だな」
「だって、女神は神だよ?」
神と人間は何もかもが違う。
神に支配されるしかない人間達によっているのか、女神と天使と言われるもの。
黄泉神と悪魔は、常に人間を見下して遊んでる。
「私達と人間じゃ違うのよ、なにもかも。でも、私は人間と分り合いたいわ。じゃあ、禁忌の書庫に行くわよー」
2人の腕をひいて立ち上がらせる。
「はー?禁忌の書庫は結界がはってあんだろ?どうやって入るんだよ」
「え?結界なんてすぐ壊せるし、はりなおせるよ?」
私はきょとんとした顔でユウに言った。
すると、ツキとユウは顔を見合わせて苦笑いする。
「あーうん。華恋はそういうやつだった」
「よく分からないわね、あなた達」
「「こっちのセリフだ」」
その言葉に、私達は笑い出した。
なんだか面白かった。
その時、ふと視線を感じて。
「お姉ちゃん、私…」
いつのまにか目を覚ましていた瑠璃華は、青白い顔をしていた。


