幽霊姫は止まれない!

 国を超えて所属を変えることは許可されず、必ずこの土地に根付くよう婚姻を結ぶ相手も同国の人間と定められているほど。それは魔力が血に宿るとされているからで、ソードマスターになれるだけの魔力量と、その魔力を操る能力も遺伝すると言われているからだった。
(ソードマスターになれる器かもしれない子供も、この国に根付かせるため……ね)
 だから、俺はいつかこの国の誰かと結婚をするのだろう。
 そしてエヴァ様は、この国の末の姫としていつか国のために結婚することが決まっている。他でもない彼女自身がそう言っていたし、いつどこへ嫁ぐ覚悟もしているとも言っていた。王族の結婚ならば、他国へ嫁ぐのが一般的だ。王太子であれば国内の有力貴族との婚姻をするだろうが、国同士のいざこざを起こさないためにも他の王子・王女は他国との婚姻を結ぶ。国同士の契約というやつだろう。
「だから、その日が来るまでは」
「何か言った?」
 口に出しているつもりは無かったが、どうやら口に出ていたらしい。不思議そうな顔をした彼女に、なるべく平静な表情を作って向ける。
「さぁ。檻の頑丈さについて考えはしてましたが」