幽霊姫は止まれない!

 幽霊姫として知り合った人も、幽霊姫だと隠して知り合った人も。
 お兄様にお姉様たち、お父様だってきっと悲しんでしまう。

 誰かの代わりに、ではダメなのだ。
 母の代わりに私がなれないように、私の代わりもいないのだ。

 母が死んで悲しむことと、私がいなくなって喜ぶことは必ずしも同じではない。
 だってこんなにも、私を大事にしてくれる人と出会ったのだ。

 誰よりも大事に、誰よりも好きだと――愛してくれた人だって、いたのだから。
 そんな彼を、私も愛しているから。だから、彼の好きな私でいよう。

 そう思うだけで、自然と震えが止まった。

 エーヴァファリンという人間は、どんな人だった?

「でも、違いました。私が母を殺したんじゃない。母が、命をかけて産んでくれたんです」
「……」

 ふふ、と口角を上げて目を細める。余裕のあるように、そしてどこか不遜にも見えるように。
 エーヴァファリンという人間は、傲慢で、我がままで、ぐうたらで、お転婆なのだ。

 周りの迷惑なんて無視し、部屋だって抜け出すのだ。