幽霊姫は止まれない!

 稀に家族に蔑ろにされている幽霊姫を見てやろう――なんて思っている相手からの招待状が来ることはあったが。

「ふぅ」
「緊張してる?」
「あっ、ごめんなさい」
 隣で思い切りため息を吐いた私に、サイラスが声をかける。
 本来ならば貴賓である彼を私がもてなし、気遣わなければならないというのに、完全に気遣われている状況に苦笑する。
 余裕のある彼とは違い、思ったよりも余裕がない自分に項垂れそうになった。
(まぁ、項垂れたりはしないけど)

 ここで落ち込むのは簡単だが、それでも私はこの国の王女だから。

「大丈夫ですよ、何も問題ありません。ただ、私はあまりこういったパーティーには出ていなかったので」
 にこりと笑みを作り、いつもより声色を高くしてそう答える。
 私のその言葉を聞いたサイラスは、少しだけ何かを思案するような表情を浮かべたかと思ったら、すぐに明るい笑みを浮かべた。

「そっか、ならよかった。久しぶりだと緊張しちゃうよな~! 俺もその点は同感だ、というか俺に至ってはリンディ国の公爵家のパーティーなんて初めてだから、お互い慣れてない同士で慰め合う方向で」