幽霊姫は止まれない!

「いやー、ちょっと気になる子がいたけど決めかねててさぁ?」
 完全に反対しようとしている側近の言葉を遮り、視線を彼が作ってくれたリストへ向ける。

 その含みを持たせた動きに、側近は一瞬唖然としたあと、さっきの顔色の悪さとはうってかわって表情を明るくした。

(ま、彼女はリストにいなかったんだがな)
 けれどそれは、わざわざいう必要のない事実。

「頼めるな?」
「も、もちろんです、殿下! 姉妹共に能力が違いますので、詳細は改めてお持ちいたしますね!」
「ありがとう」
(多分見ないけど)

 相変わらず俺の幸せと国の幸せを祈り、身を粉にしている側近には感謝してもし足りない。
 だが、感謝の気持ちと運命の相手は別だから、これも仕方ないことなのである。

「楽しみだな、会うのが」
「私も楽しみでございます!」
(お前がリストから外した姫だけどな)

 俺の中で一番引っかかったのが彼女なら、その彼女に会いに行くしかないだろう。

 恋情を抱くかはわからないが、友愛は抱くはず。