幽霊姫は止まれない!

 そもそも血で魔力が引き継がれるのだ、親の魔力が強ければ魔力の強い子が生まれるわけではない。
 今魔力を欲しているわけではないなら、相手の魔力の有無なんて関係ないのである。

 そう考えれば、自分こそが最高の結婚相手なのではないか、と思え俺は笑みを深くした。
 俺にとっても悪くなく、そして彼女にとっても兄の友人で魔力の有無を気にしない第一王子は優良物件のはずだ。

「彼女の情報は……ない、か。あー、双子の姉の方はあるが……」
 側近の作ってくれたリストに末の姫の名前はない。けれど、今俺が最も興味をそそられたのは末の姫。

「よし、行くか。リンディ国」
 お忍びはダメだ。アルゲイドは渋々ながらも歓迎してくれるだろうが、お目当てとは会えない。
 そこまで考え、俺は卓上のベルを鳴らす。

 すぐに入ってきた側近に、にこりと笑みを向けると、この〝笑み〟が面白いことを望んでいる時の顔だと察した側近は顔色を悪くした。

「親善目的の視察にいこう、行先はリンディ国。アルゲイドには俺から別途手紙を書いておくから、申請の書類を用意してくれ」
「ですが殿下、今はそれより」