幽霊姫は止まれない!

 きっとその彼女なら、俺が今『できない』と決めつけたことをいとも簡単にしてしまうのだろう。執務室の窓から飛び出し、周りの目を掻い潜って抜け出すのだ。

(もしそんな彼女と一緒なら、俺も自由に動けるものなんだろうか)

 そんな考えがふっと芽生え、再びあり得ないと首を振る。

「一国の王子に何かがあった時、責任を誰も取れないな」
 俺の命は俺のものではない。
 王族として生まれたその瞬間から、俺の人生は国のものなのだ。

「まぁ、面白そうではあるけどな」

 自由に走り回る彼女を間近で見れば、少しはこの鬱屈した気分だって晴れるかもしれない。

「……というか、悪くない相手だな」
 今緊迫してどこかと縁を繋げる必要がないなら、今ある縁をより強固にするのは決して悪手ではない。

(リンディ国なら、国同士の付き合いとして最高だしな)
 元々友人として選んだ時も、リンディ国の武力目当てだったのだ。とはいっても、すぐに彼の人柄に惹かれ、今では本心から友人関係を築いてはいるのだが。

「末の姫は魔力がない……けど、俺は魔力を気にしないし」