幽霊姫は止まれない!

 エトホーフト国から来た手紙には幽霊姫ではなく妖精姫と記載されていたし、そのあだ名もエトホーフト国の公爵令息であるミックの従姉妹が、リンディ国に住んでいるからだ。

(幽霊姫って名前は、国内では広まってるけど、国外ではそこまででもないのかも)

 それらはきっとひとえに兄たちの努力のお陰なのだろう。
 つまり、他国へ嫁げばいつでも私は幽霊をやめられるのだ。

 ちらりと視線だけでサイラスの方を確認すると、相変わらず穏やかな、だがどこか読めない笑みを浮かべていたのだった。

 ◇◇◇

「お忍びって言うから、誰にもバレないようにこっそりするのかと思ったのに」
「あっはは、期待外れ?」
「そうではないですけど」

 今日は先日の夜会で約束したサイラスとのお忍び視察の日。
 〝幽霊姫〟を活かしての話であり、わざわざお忍びだと言って平民が着るようなシンプルな飾り気のない服を指定されていたので、てっきり誰にも気付かれないように街へ出掛けるのだと思っていたのだが、蓋を開けて見ればそんなことは一切なく、同じく平民に扮した近衛騎士たちが至るところにいた。