幽霊姫は止まれない!

 もし私が噂通りの本物の幽霊なら。そうしれば、唯一の大事な人を傷つけるなんてことにはならなかったのだろうか。

「好きだったから、か……」
 もしこの言葉に、『私も』と返したら彼はどんな反応をしたのだろうか。今ごろ私たちはどんな関係になっていたのだろう。

(きっと何も変わってないわね)

 いつものように笑い、いつものように拗ねて、そしていつものように終わりから目を逸らし一緒に走り回るのだ。
 それこそ幼い、あの九歳の日のように。

「そんな未来、来ないってわかってた」
 私たちの未来は交わらない。どうそ来るはずの〝いつか〟を、今にしただけ。彼の手を離したのは私自身だった。

 その事実が心に重くのしかかる。その苦しさから逃げることは、王女として生まれた私には許されていない。

「……うん。もう結婚しましょう」
 まるで今思いついたかのように口にしたその答えに、我ながら変に納得してしまう。

 いっそさっさと政略結婚の相手を決めてしまえば、この気持ちから抜け出せる気がした。
(どうせいつかすることは決まっていたんだし、それが今でもいいじゃない)