幽霊姫は止まれない!

 それと、深窓の令嬢は窓枠から飛び出して脱出しようとはしない。

 幽霊姫という不名誉な噂は相変わらず腹立たしいが、その噂すら逆手に取って物事を自分の有利に進めようとするのだから、たまったもんじゃない。


「ふむ、ならばお前はあの姫に騙されたということか?」
「騙……、いや、そうじゃないな」
 俺の話を静かに聞いていたアルフォードが、まるで今気付きましたと言わんばかりに目を見開いて聞いてくる。

 その様子に少し笑いそうになりながらも、俺は首を左右に振った。

「任命式は、あくまでも〝式〟だ。任命されたあとは騎士の誓い……あー、騎士の誓いはわかるか?」
「失礼だな! それも本で知っているぞ、跪いて頭を垂れて、急所を剣で斬るモノマネをするやつだろう」
「すごい嫌な言い方するな……。まぁ、あなたを主として、命を捧げますって意味合いだから完全に間違ってはいないんだが」

 命を捧げ、主人のためなら死ぬ覚悟があるという意思表示。
 騎士は主人からの信頼を対価に命を捧げるという契約。